バイオ暗号
「コ行 作品」
作品名 こどもたちの暗号
著者名 富田 富士也
発行日:H7.1.15
出版社:ハート出版
形式:四六判
目次
「なし」
ストーリーの概要
まえがきにかえてから

「ぼくは親に何かをしてほしいということはなかった。ただ、傍にいてほしかった。

登校・就職拒否から心に鍵をかけ引きこもる子どもたちやその家族。
 引きこもる子どもたちは、寡黙になっています。長い間、自分自身の心のなかに不安を抱え、悩みを一人で背負ってきたからでしょうか、私たちの話しかけにも、沈黙でしか応えてくれません。でもそこに確かにいてくれるのです。
 彼らも好き好んで寡黙になっているわけではないのです。何かを伝えたい、自分の今の気持ちをわかってほしい、と心のなかでは必死に叫んでいるのです。
 
 苦しげに、絞り出すような声でポツリとこぼした言葉。  涙声で、自分の過去を語ってくれた少女。
 ツッパリの格好をしていても、母親や父親に甘えたいと、斜に構えテレ臭そうに語る少年。
 大人のように、理路整然と語るわけではありません。ときには、自分の意志とはまったく反対のことをいうこともあります。意味不明の叫びであることもあります。
子どもたちは「引きこもる」ことで自分の思いを理解してくれることを願っているのです。

 でも、それは偽らざる彼らの心のつぶやきなのです。
「あのとき、本当に誰にも理解されずに君は泣いていたんだね」

 子どもたちの心の優しさに出会うとき、私は目頭が熱くなりました。上手に自分の心を打ち明けられず、純粋で素直であるがゆえに、かえって自分自身を苦しめてしまう子どもたち。
 子どもは、大人ではないのです。この当たり前のことを、私たち大人は忘れてしまいます。子どもたちの心をわかってあげられるのは、わかってほしい≠ニ切実に求める子どもたちが一番辛く当たってしまう、あなたなのです。
暗号について
「暗号集」として、いま改めてノートのなかにつづられた彼らの言葉のいくつかを拾い出しました。それはときに辛く、また嬉しくなることでもありました。言葉ひとつひとつに子どもたちの顔が浮かんできたからです。

こどもたちの生命のメッセージとしての"暗号"

 子どもたちは、「暗号」という形で、心のメッセージを、いま一番わかってほしいあなたへ送っています。どうか、わかってあげてください。
 とくに私は、父親の関わりに子どもとの新たな出会いを期待しています。私たちカウンセラーの百の言葉よりも、父親の一言に優るものはありません。
『父親が僕に関心を向けてくれたのは三回だけだった。どこの高校へ行きたいんだ  偏差値は大丈夫か  金はいくらかかるんだ  それだけだった』
と、つぶやいた子どもがいました。そして、そのあと、『僕の好きな食べ物も友だちの名前も、尊敬している人も何も知らなかった』 と、ポツリと言いました。自分(僕)のことを知ってほしい……子どもはそう思っているのです。
 子どもたちの暗号を、本当に理解してあげられるのは、お母さん、お父さん、兄弟、そして先生といった身近な皆さんだと、私は思います。
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