日本の暗号小説
作者名 泡坂 妻夫
経歴 1932年、東京都生まれ
九段高校卒、家業は紋章上絵師。
奇術師としても知られ、1968に創作奇術で石田天海賞受賞

本名:厚川 昌男:ペンネームは本名のアナグラム。
主要な作品 1976:「DL2号機事件」(短編):第1回幻影城新人賞佳作入賞デビュー
亜愛一郎シリーズ:「上記」、「亜愛一郎の狼狽」、「同ー転倒」、「同ー逃亡」 
1978:「乱れからくり」:第31回日本推理作家協会賞受賞
「11枚のトランプ」、「湖底のまつり」、「花嫁のさけび」、「迷蝶の島」、
「奇術探偵曽我佳域全集」、「飛双」、「泡亭の夜」、「大江戸奇術考」
1982:「喜劇悲喜劇:角川小説賞、1988:「忍火山恋唄」:泉鏡花賞、1990:「陰桔梗」:直木賞受賞
作品名 かげろう飛車    (「斜陽」、「秘文字」所収)

初出版:1979 社会思想社
  (秘文字所収:暗号で記述)

発行日:2002.6.30
出版社:扶桑社
形式:扶桑社文庫
(昭和ミステリ秘宝シリーズ)
目次
「なし」
ストーリーの概要
プロ棋士・遠野八十八は、後輩の木谷のかげろう飛車に破れ、酒におぼれる。内弟子の雪男に将来を託す。木谷宛に最後の手紙を出す。それが、因縁のかげろう飛車戦法を破る手段だ。
暗号について
秘文字と言う暗号で記された3編の小説の一つ。暗号をと行くとこの小説が翻訳されるが、その小説の中に暗号が。二重暗号だ。手紙はやたらに数字が多い。徳川時代から伝わると言う将棋の表記法による暗号。
作品名 斜光  
初出稿:「野生時代」:1988.7月号
初出版:1988.7 角川書店

発行日:2002.6.30
出版社:扶桑社
形式:扶桑社文庫
(昭和ミステリ秘宝シリーズ)
目次
「なし」
(序章:踊子 1章:種子 2章:鷺娘 3章:式の準備
4章:お守り 5章:疑い 6章:多情 7章:禁断のにおい
8章:饗応 9章:戯れ 10章:辿り着く 11章:途絶
終章:廻り道)

ストーリーの概要
町内かで行った旅行先で、行方不明になっていた妻に似た女がストリップ劇場にいた。写真館主・夕城香留に持ち込まれた縁談は、勿体ないような話だった。相手は新橋の老舗の呉服商の妹、華丘弥宵38歳、初婚だと言う。山梨県南石和の穴沢町の市道沿いの崖下で全裸の腐乱死体が発見された。身元が割れる手掛りになるようなものは何もなかった。西目刑事は、胃の中にあったカボチャの種から謎を追う。弥宵は若い男がいるらしい。香留は、弥生の過去を追う。
暗号について
被害者の家の電話のそばに落ちていたパチンコ屋のコイン。コインには数字と英語の文字が。被害者のノートには電話番号が書いてあるが、関係のない家の電話番号だ。暗号か?
作品名 掘出された童話 (「ワンダー暗号ランド」所収)
芦辺ー童話 初出稿:「幻影城」:S52.3 目次

「なし」
ストーリーの概要
頑固な池本銃吉の童話「もりのさるのおまつりの」は、誤字が多く、初版は、出版社が正しく直して発行した。池本は怒り、元のままで発行し直せと言う。絵を描いた一荷と亜は、その謎解きにかかる。池本の過去に何があったのか。
暗号について
平仮名で書かれた童話が実は、モールス符合になっている。
この作品を書いたときの苦労話:「暗号三昧」より:編集長が聞いた「毎日どのくらいの分量を書いているね?」。私は指を2本出して見せた。「2枚?」。私はあわてて首を振った。「2枚などとんでもない。2行書くとふらふらになります」嘘でも掛け値でもなく、本当のことだった。暗号を作っている最中だったからだ。
作品名 弓形(ゆみなり)の月
初出版:1994.4 双葉社

発行日:1996.8.15
出版社:双葉社
形式:双葉文庫
目次

暗号  山荘  犯行  情死  恋風

失踪  暴行  刑事  解読  孤島

追想  愛人  沐浴
ストーリーの概要
劇団の女優五月は、誤配された速達が縁で同じマンションの弓子を知る。弓子はちょっとボーイッシュな娘で、お礼にとJリーグの切符をくれた。その贈り物もさりながら、速達を封も切らずに捨てたことに好奇心にかられた五月が、翌日ごみの集積場から拾ってみると、中から暗号で書かれた文書が出てきた。五月は、劇団の座長真吹から自分の妻に扮して出かけるよう指示される。真吹の父親の蘭秋が遺した別荘「桂華荘」には、真吹の知人や蘭秋の弟子が集まっていた。五月は真吹の妻を演じているが、中身は男性であった。弓子は、同姓の恋人鏡子と心中を図ったが死にきれなかったらしい。弓子に魅了された五月は彼女と暮らし始める。鏡子の死に不審を抱く刑事。周囲と隔絶された小笠原諸島を場面に男女の起源に肉薄していく。
暗号について
・オオミズナギドリの切手の貼ってある封筒から、カナ文字の暗号文が。カナ文字は漢字を省略したものだ。同じ漢字から新しいカナを作った暗号だ。解読の鍵の一つに消印が絡む。
・電話をかける際の合図に暗号を活用
作品名 11枚のとらんぷ
初出版:昭和51年11月:?

発行日:昭和54年8月30日
出版社:角川書店
形式:角川文庫
目次
T部 11の奇術
1 奇術 2 バレエ 3 人形劇
U部 「11枚のとらんぷ」
第1話:新会員のために 第2話:青いダイヤ 第3話:予言する電報 第4話:九官鳥の透視術 第5話:赤い電話器 第6話:砂と磁石 第7話:バラのタンゴ 第8話:見えないサイン 第9話:バイン氏の奇術 第10話:レコードの中の予言者 第11話:闇の中のカード
V部 11番目のトリック
4 蚤の市 5 コンテスト 6 クローズアップ 7 奇術講義会 8 ディナー 9 マジキクラブ控室 10 ビッグショウ 11 お別れパーティ
ストーリーの概要
真敷市公民館の創立20周年を祝うマジックショウのフィナーレ、出演者全員が舞台に並び、中央の「人形の家」から水田志摩子が飛び出すはずだった。が、その志摩子は同じ頃、自分のマンションで殺害されていた。その死体の周囲には、「奇術小説集:11枚とらんぷ」のトリックに使われる11の小道具が、壊されて並べられていた。T部とV部の間に短編集が挟まれたユニークな構成。
暗号について
マジックには必ず「タネ」がある。その1つが、仲間との間で決めた「暗号」。例えば、〈もしもし〉と言えばハートのA、〈ハロー〉と言えばハートの3。
inserted by FC2 system