日本の暗号小説
作者名 江戸川 乱歩
作品名 幻影城      (江戸川乱歩全集第26巻)
初出:S26.5:岩谷書店

発行日:2003.11.20
出版社:光文社
形式:文庫
目次
・探偵小説の定義と類別
・二つの比較論
・倒叙探偵小説
・倒叙探偵小説再説
・英米探偵小説界の展望
・イギリス新本格派の諸作
・英米探偵小説評論界の現状
・英米探偵ベスト集と「奇妙な味」
・探偵作家としてのエドガー・ポー
・二つの角度から
・一般文壇と探偵小説
・続・一般文壇と探偵小説
・探偵小説純文学論を評す
・怪談入門
・附録
ストーリーの概要
「幻影城」は、昭和21年から25年にかけて諸雑誌に発表した評論及び書き下ろしの評論をまとめ、昭和26年5月、岩谷書店から刊行された。千部限定と広告にあったこの初刊本はカバー装だった。
昭和29年7月、函装に改めて、特別限定版として再刊された。その際、22箇所を訂正したとあるが、その箇所は確定されないと言う。

今回、ここで紹介するのは、「探偵作家としてのエドガー・ポー」(「宝石」昭和24年11月号)である。
1 推理三昧
・ ポーの探偵小説は広く考えて5編、随筆も5編。この10編を年代順に並べてみると、ポーの作家としての短い生涯の大部分を覆っている。探偵小説は単なる余技とする考え方は間違っている。
2 原型の確率
・ もしポーが探偵小説を発明しなかったら、コリンズやガボリオーは生まれたかもしれないが、恐らくドイルは生まれなかったであろう。
・ポーは、5編しか書いていないにもかかわらず、その5編を以って、探偵小説百年の大計を建てたと言える。
3 トリックの創造
・ 5編の作品について、トリックの主たるもの、その後代への影響を分析、記している。
・ これらのトリックの内、その後も使用せられ、最も長い生命を持った著しいトリックは「密室殺人」、「探偵即犯人トリック」、「盲点原理」の三つであろう。たった5編の探偵小説によって、各も重要なトリック原型を三つまでも創案し、その後多くの作家にこれを模倣せしめたことは、ポーの独創力が如何に偉大であったかを物語るものである。
暗号について
1 推理三昧
・ 1841年:「暗号論」、1843年:「黄金虫」発表
・ 「暗号論」:「新青年」大正11年8月増刊に、小酒井不木博士が翻訳・解説
・ 「暗号論」:ポーが編集する「グレアム雑誌」で、読者から難解な暗号を募り、これを解いてみせた。ポーの推理マニアが暗号解読を楽しむとともに、これを雑誌の人気取りに利用。
・ 歴史上の各種の暗号記法について解説、読者出題を例示、解答を示した。
3 トリックの創造・・・「黄金虫」の分析
・ 前半の怪奇小説の部分を褒める人が多いが、私は後半の推理の部分に心酔している。ポーは、最も簡単な暗号と言ったが、初読の時、この暗号解読の手順のすばらしさに、文字通り驚嘆した。
・ この小説の着想の中心は恐らく暗号解読にあったと思われる。
・ ドイルは、この「黄金虫」の暗号の部分をとって「舞踏人形」を書いた。
・ ボンド編纂の「暗号小説傑作集」が出版されたが、脅威ある作品は一つもなかった。
・ ポーは、暗号小説においても、最も古く、しかも優れた作家だった。
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