日本の暗号小説
作者名 水野 雅士
作品名 ホームズ探偵学序説
発行日:1999.6.30
出版社:青弓社
形式:四六判(ソフト)
    「寺小屋ブックス01」
目次
T シャーロック・ホームズの推理方法序説
U 吾輩はバスカヴィル家の犬である
ストーリーの概要
ホームズ自身の手になる「探偵学大全」の未発表原稿が発覚!・・・というかたちで、ホームズ推理学を解き明かす形式。
第1部:
「アベイ農場」の中で、友人であり事件の記録者でもあるワトソン医師に「探偵学大全」(刊行された形跡なし)を、自ら執筆すると約束している。その序説を筆者が偶然手に入れ公表すると言う設定で、ホームズの非凡な推理方法の背景を究明。
第2部:
比較的人気のある「パスカヴィル家の犬」を下敷きに、犬の視点から描いたパロディ。

目次の細部
T シャーロック・ホームズの推理方法序説
 訳者はしがき、 序
 1 人生の転機となった最初の事件
 2 部分から全体を推理する
 3 全体から部分を推理する
 4 論理学を応用して推理する
 5 確率によって推理する
 6 推理に必要な能力とは何か
 7 手がかりを集める
 8 仮説を立てる
 9 事実関係を検証する
U 吾輩はバスカヴィル家の犬である
 (暗号に関係ないので略)
暗号について
2 部分から全体を推理する:
 「踊る人形」で犯人しか知らないはずの暗号を解いた。・・・「人間が考え出したものなら必ず人間に解けるものだ」

9 事実関係を検証する
 「検証の方法」
 具体例として「グロリアスコット号」における暗号解読のケース・・・・依頼人の父親をしに至らしめた短い手紙
 ・表面とは違った意味を持つ巧妙な暗号文に違いないと仮説。「蝿取り紙」、「雌雉」のような奇妙な単語の隠れた意味は推理では解決できないので語順の組み合わせの検討から取り掛かった。最初は逆順に読み、次に1語おき、次に2語おきに読み、運よく意味のある分が出た。この文ならショックを受けた説明ができ、かつこれ以外の組み合わせや方法で明確な文章が出来上がる確率はきわめて小さいのでこれをもって結論とした。
 「検証に必要な能力」
 具体例として「恐怖の谷」の暗号解読・・・モーリアティ教授の部下ポーロックからホームズ宛に届いた暗号文
 ・数字と英単語3語の短い文。解読の鍵が手に入らず、論理的にとく。
  この男は本を利用している。どんな本を使ったか推理することが全ての鍵、想像力の働かせ次第で試行錯誤の作業量が大きく違ってくる。冒頭の「534」から、本は分厚い本と想定する。次の「C2」は第2章の略だとすると第1章が常識はずれの長さになるから、段(column)の略と判断。「293」という数字から、各段は二段に組まれ、その1段はかなり長い。英単語はその語がそのページになかった。その本はわれわれも持っている本であろう。聖書はいろいろな版が出回っているので不向き。年鑑であろう。しかし、解けない。突然ひらめく。年が明けたばかりなので、新年鑑ではなく前年の年鑑であろう。・・・ついに解けた。

*訳注
(9)暗号
 「踊る暗号」で、「あらゆる形式の暗号記法にかなり精通していて、この問題に関するささやかな論文もものにしている。その中で160もの暗号を分析している」と言っている。

inserted by FC2 system