日本の暗号小説
作者名 愛川 昌
作品名 化身   (アヴァターラ)
発行日:1994.9.15
出版社:東京創元社
形式:四十六版

第5回鮎川哲也賞
目次
プロローグ
第1章 笛を吹く少年
第2章 弓を引く王子
第3章 チャクラを持つ神
第4章 アヴァターラ
エピローグ
ストーリーの概要
自分は誘拐された園児なのか? ある日届いた差出人不明の写真は、過去に潜んだ謎を解く始まりだった……。
いきなり保育園を登場させ、意表をついたオープニングが面白い。

(鮎川哲也選評)
園児をめぐる謎に続いて差出人不詳の封書の謎、相手の意図するところが皆目わからないというストーリーは巧みな演出で、気がついた時には作者が紡ぎだす面白い世界に肩までひたっている。
もう一つ感心したのは人物がよく描かれている点で、特に小料理屋の夫婦は出色である。
(紀田純一郎選評)
保育園に発生した事件に外国神話や戸籍追求という趣向を絡ませた作品で、人物配置や展開も非常に要領がよい。トリックはあまり感心しないが、動機に意外性がある。
しかし、折角このような奇想を得ながら、裏打ちとなる心理的要素が十分でない憾みがある。もとより実生活ではありえない話だが、それにリアリティを与えるのが創作の妙味であるはずだ。犯人像にも神話を持ち出してヒロインを混乱させるような特異性が感じられない。戸籍に関する知識は意外性に富んでいるとはいえ、最近の既成作家がこの種のルーツ探しにあたって、戸籍に依存しないように配慮している点を学んでほしい。
(中島河太郎選評)
差出人不明の人から女子大生んのところへ写真が送られてくるという発端である。量子の父も母も死んでいる彼女は、友人の先輩で植物に詳しい坂崎の援助で、「私は誰かを知りたい」という行動をはじめる。
20年前、保育園から誘拐された彼女の苦悩と愛の姿が美しく描かれている。戸籍法の仕組みを巧みに利用して過去と現在を結ぶつけた謎に挑んだ構成がたのもしい。
暗号について
*アナグラム:2件
・ 同級生の「杉原留紫香」・・・音も児も上品
 ローマ字の並び替え:父親が愛らしく(AIRASHIKU)を「RUSHIKAA」に並び替え、「A」と「I」を整理→「RUSHIKA」

・ヒロインの「操」:「HITOMI MISAO」・・・・姉の名「HITOMI SAEDA」→「MISAO」・・・「DEATH」(死)を抜く
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