日本の暗号小説
作者名 柳 広司
作品名 ダブル・ジョーカー
初出:2009.8;角川書店
 (+眠る男)

発行日:H24.6.25
出版社:角川書店
形式:文庫
目次
* ダブル・ジョーカー
* 蝿の王
* 仏印作戦
* 柩
* ブラックバード
* 眠る男
ストーリーの概要
* 短編6編。 「ジョーカー・ゲーム」シリーズ第2弾。
* ダブル・ジョーカー 
  結城中佐率いる異能のスパイ組織“D機関”の暗躍の陰で、もう一つの諜報組織“風機関”が設立された。
 その戒律は「躊躇なく殺せ。潔く死ね」。D機関の追い落としを謀る風機関に対し、結城中佐が放った驚愕の一手とは?

* 蝿の王
 治安維持法によって兄を失った脇坂は共産主義思想に傾倒し、やがて北支前線の隊付き軍医として従軍しながらモスクワのスパイとして活動を続けることになる。日本の敗北のために
* 仏印作戦

 電信所に勤める高林が軍からの命令で仏印(フランス領インドシナ連邦)に半軍人・半民間人という立場で着任することにより、図らずもスパイゲームに巻き込まれる。
*柩

 ”死ぬな、殺すな”をモットーとするスパイが図らずも事故死。スパイの死後とD機関の凄みをドイツ側のスパイ・ハンターの視点から描いた。
* ブラックバード

 ブラックバードの意味は”二重の偽の経歴(ダブル・カバー)”。
 日本人であるというだけでスパイの疑いをかけられる中、嘘発見器(ポリグラフ)を誤魔化しながらスパイ活動を続け、著名経済人の娘と偽装結婚。
* 眠る男

 単行本未収録の作品、特別収録。前作「ロビンソン」のスピンオフ小説とのこと。
暗号について
1 ダブル・ジョーカー
 *符牒
  ・白幡樹一郎:「ハクスレー」、英国のスパイ:「お客」、統帥綱領:「主要商品」、D機関:「ライバル社」
2 蝿の王
 *死んだ兄の遺したノートに暗号文が・・・子供頃兄と暗号遊びをした。
  ・都内の某所の住所と合言葉だった・・・住所を訪れ、合言葉を残す・・・連絡があり、モスクワのスパイになる
 *「ワキサカ式」と呼ばれる独特の通信手段の考案
  ・特殊な溶液を吹きつけると行間に細かい数字が浮かび上がる。
  ・その数字を手持ちの辞書に隠された暗号表を使って、ロシア語の通信文に変換
  ・ベルゼブル:蝿の王
  ・スパイハンター:「笑わぬ男」の暗号名
 *極秘通信手段
  ・道端の支那兵の死体につける・・・誰も手をつけない盲点
  ・綺麗な死体、野犬の嫌がる匂いと防腐剤を塗布・・・同志への合図
3 仏印作戦・・・
暗号小説として面白い
 *任務・・・@しさつだんの通信文の暗号化 A暗号電文を参謀本部に送る・・・何故二つに分けた?
  ・陸軍の暗号使用。しかし、無線設備がないので、仏印の郵便局から打電。
  ・海軍の利用は不可・・・同一の無線機から陸軍の暗号電を発送すると混乱する
 *暗号作業について・・・具体的・・・作成、翻訳、作業用紙・電文の破棄処理
 *永瀬からの指示・・「通信終了」の後で「極秘電報」を打電・・・この意味は?
  ・解読するために自分の作った日本語を暗号化させる。二つを突き合わせれば解読可能だ。
4 柩
 *ヴォルフは日本大使館の暗号電文を入手するルートを持っていた・・・極秘協定が日本に漏れていた。
 *死体のシャツの襟の二枚の記事の間にマイクロフィルムを縫い込んでいた。
5 ブラックバード
 *前日に丸暗記させられた複雑極まりない暗号を自然な言語のように使いこなす要求
 *鏡に映った左右反対の文字を一瞬で読み取る
 *協力者相互の通信手段・・・手にしている新聞の日付と曜日
  ・31(日)×7(曜日)の217通りの情報が可能
 *サンドウィッチの包み紙に見えないインクで暗号情報を記す。
6 眠る男
 *絵葉書に逆さまに貼られた1ペニー切手・・・スリーパーを目覚めさせる合図
inserted by FC2 system