日本の暗号小説
作者名 井沢 元彦
作品名 義経幻殺録
発行日:S61.12.10
出版社:講談社
形式:四六判
目次
「なし」
ストーリーの概要
大正10年春、中国・上海。
大阪毎日新聞の特派記者として上海に赴いた芥川は、元陸軍大尉という貿易商の依頼で、義経が清の始祖である証拠である書物、清の遺臣から入手することを頼まれる。
 上海から北京、そして神戸へと謎の書を追った芥川らは、ついにその書物「玉牒天おう世系(ぎょくちょうてんおうせいけい)」を手に入れる。この書の真贋をその道の専門家に鑑定をしてもらうが。(「おう」の字は保存できない文字なのでひらがなとした)
 鑑定の結果を聞くために、専門家に家を訪問したが、その場でその男は、持病で苦しみ、薬を飲んだ途端死んでしまうが、薬には毒薬が!

 ロシア・ロマノフ王家の秘宝・ペルテルブルクの星の行方は? ロシアのロマノフ王家の生き残りたちと、王家の一員であることを証明する宝石を追う男として明智小五郎(中国読みにすると、ミン・ヂイと言う名になるらしい。)が登場。さらに彼が「人間椅子」を使って美貌のロシア婦人の真意を探る。

清国再興をもくろむ日本陸軍の黒幕とは?連続殺人と歴史の謎に挑戦する芥川探偵の名推理。


 という設定なのだが、まである。
 これは実によくできた小説。実際、義経清祖説は日本の大陸進出の大義名分のために流布されたとも言われており、小説にもそれを暗示するように当時の大政治家や、後の満州帝国で暗躍した憲兵将校、甘粕正彦まで登場させている。何よりも芥川が登場して推理を展開していく内容に、ほとんど違和感を覚えない点が素晴らしい。実に自然で、本当にこんなこともあったかもしれんと思わせるのだ。
暗号について
専門家・陳先生は、急に発作を起こし、一言「ビィホィ」と言い、息を引き取る。ダイイング・メッセージだ。
通訳をした五木田元大尉は、「閉会」だと言うが? その後、五木田は「ビィホワァ」ではないかと言い出す。「ビィホワァ」だと「壁画」となるが?壁画の木枠にマッチ棒くらいの紙を見つけるが、そこには「犯人是明智」と書かれていた。
龍之介はどうもおかしいと思い、再確認すると「避諱」だと判明。
その書物の本文に「是始祖源義経也」とあるのは、間違いである。即ち「諱」が書物の真偽の鍵だった。

陳先生の最後の言葉は、ダイイング・メッセージとなった。言葉の発音、意味は知らない物にとっては、暗号だ。
inserted by FC2 system