歴史暗号
[カ行 作品]
作品名 柿本人麿の謎
著者名 栗崎 瑞雄
発行日:S55.11.27
出版社:現代日本社
形式:四六判
目次
第1章 『いろは歌』の謎
第2章 人麿出生の謎
第3章 人麿と壬申の乱
第4章 藤原不比等の陰謀
第5章 流罪事件の謎
第6章 『いろは歌』第三の暗号
第7章 石見の鴨山考
第8章 人麿臨終の真相
ストーリーの概要
人麿の一生は、多くの点で「謎」とされてきた。「万葉集」の代表的な歌人として、天武・持統両帝に仕え、宮廷歌人として、誰一人として知らぬ人のいないほどの歌人が、その足跡をたどろうとすると「万葉集」以外の書物には名前すら見ることが出来ない。
これはどういうことか!
梅原猛氏は、「水底の歌」で、人麿の死は刑死であろうと推定。流罪者なるがゆえに正史に名をとどめないのであろうと推論。
篠原史憲氏は、「いろは歌の謎」で、いろは歌は、ある死刑囚の暗号による遺書であろう」と述べ、その死刑囚が人麿であろうと推論。
筆者は、その流罪の事実、その由縁はどのような罪であるのか、何故そのような罪におちったのか等々、各種資料から分析、その謎に迫っている。

目次の細部

第1章 『いろは歌』の謎
 ・わが世誰ぞ常ならむ ・”咎なくて死す"の暗号 ・「いろは歌」の裏に歴史的な背景が ・「いろは歌」には表歌と裏歌がある ・「いろは歌」の成立は奈良時代か ・「いろは歌」は弘法大師の作ではない ・「いろは歌」と「金光明最勝王経」

第2章 人麿出生の謎
 ・「いろは歌」の作者は人麿 ・人麿の出生について ・和珥・春日氏の系譜(1) ・和珥・春日氏の系譜(2) ・和珥・春日氏の系譜(3) ・柿本氏の本貫は大和添上か ・「庚辰の年の七夕の歌」は20歳の作 ・天武10年人麿21歳で出仕

第3章 人麿と壬申の乱
 ・人麿は壬申の乱の時はどこにいたか ・「いろは歌」第2の暗号と大津 ・壬申の乱はなぜ起こったか ・壬申の乱と大友皇子の敗北 ・壬申の乱に人麿は参戦したか ・天武・持統朝と皇位継承の序列 ・貴公子大津皇子の悲劇

第4章 藤原不比等の陰謀
 ・軽公子大津皇子をめぐる不比等の暗躍 ・藤原氏帰化人説と「史」グループの謎 ・大津皇子謀反事件は持統の陰謀か ・高市皇子の死も不比等らの陰謀か ・事件の中心人物弓削皇子の謎の死 ・事件の連座を語る志斐の嫗の死

第5章 流罪事件の謎
 ・「万葉集」の構成と成立年代 ・「万葉集」は人麿の鎮魂歌集 ・人麿の皇室賛美と春宮大夫の地位 ・「万葉集」巻3の羈旅歌は流罪人の歌 ・人麿は志賀の大津で逮捕された ・「天地の歌」第2の暗号の謎 ・「いろは歌」の暗号は大津の妻に送られた ・人麿の妻や子を想う歌は獄中の作

第6章 『いろは歌』第三の暗号
 ・事件の核心に迫る「天地の歌」第3の暗号 ・拷問の真相を語る「いろは歌」第3の暗号 ・「いろは歌」の暗号の返歌が「万葉集」にある ・人麿の獄中の心境を伝える三つの歌 ・妻死りし後、涙血哀働して作る歌 ・人麿の流罪と讃岐の狭岑島の歌

第7章 石見の鴨山考
 ・人麿の羈旅歌は流罪地に下る時の歌 ・人麿の石見の歌は何を語るか 石見国より妻に分かれて上り来る時の歌 ・人麿の臨終の地鴨山はどこか ・高津鴨山説 ・浜田鴨山説 ・神村・恵良鴨山説 ・湯抱鴨山説 ・鴨山の諸説を否定する

第8章 人麿臨終の真相
 ・「鴨山五首」は何を語っているか ・高津説・湯抱説を否定する ・鴨山は浜田の亀山 ・人麿の死の謎を推理する ・人麿の臨終は和銅元年 
夷の荒野に君を置きて ・人麿の残照

あとがき、柿本人麿年表、和珥・春日・柿本氏の系譜
暗号について
「いろは歌」の暗号
第1の暗号:「咎なくて死す」
第2の暗号:「ほおつのこめ」→「凡津の子妻」、「大津の子妻」
第3の暗号:「すみこめゆぜもひゑ きふのねつわ をそゐけさ あやまらむより うたれぬるには」→
        「炭米湯ぜもひえ 急の熱は 遅い今朝 謝まらむより 打たれぬるには」
「天地の歌」の暗号
第1の暗号:「人犬上末」
第2の暗号:「猿」の署名、「かきもとひと」
第3の暗号:「あやまつかはり うろたげにそねみむ こゑすへ きぬいとも くひゆわさる おふせよ」
      (誤るかわりに、うろたえているようにみせて、嫉み、いくら拷問されても、声をころして、絹糸ほども悔いたり、云ったりしない。だから、あなたの方も隠しなさい。)

*読んで感じたこと
いろは歌の第1の暗号は、問題ないと思う。
しかし、その他の暗号は、上手く読み取って入ると思うが、こじつけではなかろうか?このような解釈をすれば、文章はすべて暗号となってしまう。第2の暗号までは許せるとしても、第3の暗号のように規則性のない読み方は暗号解読としては?
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