暗号戦史
「キ行 作品」
作品名 北朝鮮諜報機関の全貌    その内部からの告発
著者名 呉 基完
発行日:S52.2.28
出版社:世界日報社
形式:四六判(ソフト)
目次
・ 対日・対南工作の指令所
・ 極東赤化戦略の展開
・ 北朝鮮地下代表部事件
・ う回潜入の手口
・ 科学者を連れてこい
・ 暗殺指令
・ 暴力革命の輸出
・ 海外諜報工作
・ 北朝鮮の対日工作
ストーリーの概要
金日成は、終局的には暴力による「南朝鮮革命」の完遂という基本戦略を一歩たりとも後退させたことがない。今日、北朝鮮は直接的な対南浸透工作とともに、日本を通じての間接的な迂回作戦を展開してきたが、「日本ほど魅力的な工作地、スパイの温床はない」との判断の下に、その成否に一喜一憂している。
元北朝鮮諜報機関員だった著者が世界日報紙に昭和51年10月10日から52年1月29費まで連載した記事の単行本。
暗号について
* 工作員に対する指令
 ・ 平壌との連絡方法:亜細亜公司北京出張所あてに手紙を発送。内容の一例
  工作準備がうまくいかない場合:今のところ商売は思わしくないが、これからはうまくいくかも知れない。
  準備がはかどらない、望みがない時:商売がさっぱり振るわない。今後も見通しが暗い。
 ・ 他のスパイとの連絡
  「上野ライン」と接触:「ここから上野へは、どう行きますか?」「どこか地方からいらっしゃったんですか?」「いいえ、島からまいりました」「あ、じゃ、35丁目をお尋ねですね?」「そうです」
  「無電機を渡す相手」との接触:毎月第1水曜日に新宿の日活映画館に行く。右手には火ならず毎日新聞を持つ。映画雑誌を手にした男が現われ、「あなたは文芸社の勝美さんではありませんか?」と聞かれたら「どなたでいらっしゃいますか?」と聞き返す。その時相手が「先日は弟が大変お世話になりました」と答えたらその男に渡す。

* 極秘時の「化学暗書法」
 ・ 黄血塩(フェロシアン化カリウム)を50倍薄めた溶液か、硫酸第二鉄を100倍薄めた溶液で、新聞紙なら3面下段の空欄に、雑誌や書籍の場合は31ページの空欄に報告文を書き込む。書き込んだ印として表紙の題目に一滴のインキを落とす。
   この2種の化学薬品は色がつかないから発覚の恐れはない。文字を読む場合は、黄血塩の場合はその上に硫酸第二鉄を、またはその逆にすれば黄色文字が浮かび上がる。

* 無電による報告
 ・ 前もって定められた暗号文と乱数表に基づいて無電報告文を作成する。暗号表による発信を第1次発信、乱数表による発信を第2次発信と言う。暗号文は、ハングル文字でつづられる。これは現代の解読法では簡単に解読されるので、乱数表を用いての第2次発信がかかせない。
 ・ 乱数表による暗号文は、該当乱数表を持ち合わせているものでなければ絶対に解読できない。
 ・ 報告文の略符号の一例:
   韓国空軍に入隊させる対南工作員を確保した時:「妹が結婚しました」
   韓国空軍に入隊した時:「妹が身ごもった」
   韓国空軍参謀部へ潜入成功した時:「兄が結婚しました」
 ・ 対日工作の指令電報は殆ど数字の組み立てによる暗号電である。5桁の数字。

* スパイ教育の内容:無電機の組み立て、取り扱い、乱数表の使い方、暗号書の書き方等。

* 温海事件(昭和48年8月6日)
 ・ 所謂スパイの七つ道具を所持:トランジスタラジオ、トランシーバー、腕時計、粉末食料、懐中電灯、ボート用船外機、乱数表・暗号表
 ・ 乱数表:受信用明記、5桁の数字、左から右へ5組、縦に20行の百組で1ページ、10ページ構成
 ・ 暗号表:換字式、小さな枠100個で大枠1個を、大枠10個で全体を構成、即ち1000個の枠有り。
  ・・・用語の一部有り:内容から明らかに日本におけるスパイ活動用の暗号書である。
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