暗号戦史
「ニ行 作品」
作品名 日本軍のインテリジェンス    なぜ情報が活かされないのか
著者名 小谷 賢
発行日:2007.4.10
出版社:講談社
形式:四六判(ソフト)
「講談社選書メチエ386」
目次
第1章 日本軍による情報収集活動
第2章 陸軍の情報収集
第3章 海軍の情報収集
第4章 情報の分析・評価はいかになされたか
第5章 情報の利用成功と失敗の実例
第6章 戦略における情報利用
第7章 日本軍のインテリジェンスの問題点
終章 歴史の教訓
ストーリーの概要
日本はなぜ負けたのか

暗号解読など優れたインフォメーション解読能力を持ちながら、なぜ日本軍は情報戦に敗れたか。「作戦重視、情報軽視」「長期的視野の欠如」「セクショナリズム」。日本軍最大の弱点はインテリジェンス意識の欠如にあった。

現代的視点から日本軍の情報調査分析能力を冷静に評価した。日本軍の個々の情報工作や関係者の伝記は山ほど残されているが、インテリジェンス活動を総括し現代的評価を下した本はいまだない。全体として「情報軽視」が敗戦の一因になったという捕らえられ方が一般的になっている。
著者はここで、陸軍に関しては世界最高クラスのソ連と情報戦をして、それなりの成果を挙げ、米英に関しては、最高度の暗号解読にも成功し、国民党に関しては暗号解読し放題で、戦果を次々挙げたとしている。
一方だめだったのは海軍で、暗号は米英にだだ漏れ状態。米軍艦への戦果調査もずさんで、天皇に「今度でサラトガの撃沈は4度目ではないか」とたしなめられている。

筆者は、現在の日本のインテリジェンスの本質が戦前とほとんど変わっていないことを指摘し、その本質を変えない限り、現在の日本のインテリジェンスが絶望的であることを述べている。


目次の細部
第1章 日本軍による情報収集活動
 1 情報源による類型
 2 通信情報(シギント)
第2章 陸軍の情報収集
 1 通信情報
 2 人的情報(ヒューミント)
 3 防諜(カウンター・インテリジェンス)
第3章 海軍の情報収集
 1 通信情報
 2 人的情報
 3 防諜
第4章 情報の分析・評価はいかになされたか
 1 陸海軍の情報分析
 2 陸海軍における情報部の地位
 3 情報部の役割
第5章 情報の利用成功と失敗の実例
 1 戦術レベルにおける利用
 2 主観と偏見―情報の落とし穴
第6章 戦略における情報利用
 ―太平洋戦争に至る政策決定と情報の役割
第7章 日本軍のインテリジェンスの問題点
終章 歴史の教訓
暗号について
はじめに:
・日本の通信情報活動に関する研究の遅れ・・・日本の暗号が解読され対外政策が著しく制限された史実の研究不十分
第1章 日本軍による情報収集活動
・特殊情報・・・日本が連合軍側の通信を傍受、解読した通信情報。・・・・陸海軍とも関心は高かった。しかし、活用不十分。
・各種資料や研究論文により、日本の通信情報能力は高かったことが伺える。
第2章 陸軍の情報収集
・対米英暗号解読活動の状況
・対中暗号解読活動の状況
・対ソ暗号解読活動の状況
・憲兵隊による各国大使館進入による暗号書等の入手の状況
第3章 海軍の情報収集
・X機関(上海における対中通信傍受組織)の設立
・方位測定の活用・・・暗号解読が出来ない場合通信分析による情報活用
・海軍の米英による暗号解読、暗号漏洩事例・・・海軍甲事件、海軍乙事件、ミッドウェイ海戦等
第4章 情報の分析・評価はいかになされたか
・陸軍暗号学理研究会の発足・・・遅い。優秀な数学者を学徒出陣で第一線へ。
・日本の北部仏印進駐は、通信情報の成果・・・戦前派比較的活用
・戦中は通信情報を活用せず・・・空母サラトガを四度撃沈・・・天皇から苦言
・情報部の地位の低さ・・・作戦部から無視、人材不足
第5章 情報の利用成功と失敗の実例
・乾岔子事件、張鼓峰事件、ノモンハン事件においては暗号解読による通信情報を活用。
第6章 戦略における情報利用
・暗号解読による通信情報を活用した事例はない。無視された。
第7章 日本軍のインテリジェンスの問題点:特になし
終章 歴史の教訓:特になし

「註」に出典の根拠となる書籍・文書があり、参考になる。
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