暗号戦史
「ニ行 作品」
作品名 日本海軍とラットランド英空軍少佐  
著者名 小谷 賢
発行日:2002.9.1
出版社:錦正社
編集:軍事史学会
形式:機関紙
目次
はじめに
1 戦間期の英国情報部
2 ラットランド英空軍少佐
3 スリーパー・ラットランド
おわりに

副題:
1930年代における日本海軍の諜報活動とイギリス情報部
ストーリーの概要
(はじめにから)
GC&CSの資料が公開され、戦前日本海軍がイギリス人スパイ、ラットランド元英空軍少佐を雇ってアメリカに潜入させていた事件を扱ったファイルがあった。
日本に雇われていたその他のイギリス人は、元労働党議員・マローン、英秘密情報部エージェント・グレアムグリーンの兄ハーバート・グリーン、元海軍将校・センビル、満州国政策アドバイサー・エドワーズらの名があがるが、深くは関わっていない。
戦間期の日本軍の情報収集活動は、主にエージェントからの報告によるものであり、電波傍受に比重を置いていた英米のそれとは異なる。しかし、日本側のスパイ活動は、東京と出先機関との通信を丹念に傍受していた英米に知られることが多く、このラットランドの一件も、MI5、MI6、GC&CSから常に監視されていた。
イギリスの情報組織が、どのようにして日本の諜報活動を監視し、日本側の意図を割り出そうとしていたのかを考察する。


1 戦間期の英国情報部
 MI5、MI6、GC&CS

2 ラットランド英空軍少佐
 ・ 第1次世界大戦:アルバート・メダル1級、殊勲十字章等受賞、イギリス軍の英雄
 ・ 大戦後、日本側からラットランドに接近、空母艦載機のアドバイサーとして。
   しかしMI6は直ぐにキャッチ、だが、泳がせておく。
 ・ 1923年退官、1924年訪日。三菱造船勤務。艦載機の設計指導等。・・・・報酬数千ポンド(6〜7千万)
3 スリーパー・ラットランド
 ・ 1927.10、契約切れでいったん英に戻る。1932年11月、スパイとして接触開始。
 ・ ラットランドをアメリカに配置、契約内容
   ・ 年間二千ポンドの報酬、 ・ 米での活動資金提供 ・ 死亡した場合の家族への手当て ・ 最低5年間米に滞在
   ・ 主要な目的:情報収集そのものではなく、米に於ける情報網の整備、エージェントの受け皿作り等土台築き
   ・ 戦争突入時は情報収集:米艦隊の規模、配置等
  ・ 1941年6月、日本側の担当者・立花中佐がFBIに逮捕される。英側はラットランドを保護、英に送還。
おわりに
 ・ ラットランドは、金と冒険のために働いた。日本側はラットランドに頼りすぎた。
 ・ 数万ポンドを提供した割には、有益な情報を報告していない。
 ・ 英から見た場合、ラットランドの活動は日本海軍の意図を示すバロメーター・・・・関心は、米太平洋艦隊とハワイ
暗号について
1 戦間期の英国情報部
 ・ GC&CS:現在のGCHQ;設立当初は、在英の外国大使館の電信傍受、次第に、無線傍受、暗号解読へ
2 ラットランド英空軍少佐
 ・ 日本側とラットランドの間の会話を盗聴
3 スリーパー・ラットランド
 ・ 東京と在英日本大使館との間の通信傍受、ラットランドに関する情報を適確に掴む。ラットランドの暗号名:シンカワ
 ・ 日本から「13文字の電報」が届くと、戦争開始の合図。
 ・ 日本軍の暗号コードを理解していた。・・・数字により戦艦や巡洋艦等の情報を送る
おわりに
 ・ ラットランドに関するGC&CSの通信傍受の成果
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