作品名 |
日米外交秘話 ―わが外交史― |
著者名 |
来栖 三郎 |
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発行日:S27.8.10
出版社:創元社
形式:四六判 |
目次
前篇 砂汀に描く
1 渋沢翁の一喝
2 漢口の官補
3 ホノルル・紐育・シカゴ
4 マニラの二年
5 田中義一とウッド
6 ラテン・アメリカの二国
7 枢軸以前の独伊とギリシャ
8 国際会議の寸観
9 経済外交点描
10 9ヵ国会議
11 仏・独仲介の中日和平
12 三国同盟の調印 |
ストーリーの概要 |
外交官として記録を公表するのは少なからざる心遣いが必要である。今日になっては何でも書ける理屈だが、守る節度がある。
当時の事情も明らかにしておく方が、よく彼我の立場を了解するものに役立つと信じたものは、前後の関係を明確にした。
敗戦以降、蟄居生活の私の耳にすら、卑屈に過ぎると思われたり、人間性の現実を無視した議論が聞こえてくる。これは実相を知らぬ人々が、正当な判断を持たぬために、自信を喪失するためではあるまいか。
例えば「日米交渉」の真相を知るだけでも、日本人は今一度冷静に反省して、自己の力と過誤を判別する一助となろう。
米国では今尚、私は米国の大衆から「偽りの大使」と見られているらしいが、私は日本の外交の狙いには暗い影は決してなかったと言いたい。
犯した過誤は過誤として率直に認め、自力の限界としてこれを認めても、結局我々は襟を正して天日を仰ぎ、世界を堂々と進出し得る。 (「序」から)
目次の続き
後篇 日米交渉
1 傍受・誤読・誤訳された電報 2 深夜の急使 3 東条首相との会見
4 在勤二年の地をすぐ 5 ミッドウェーの48時間 6 到着当時のワシントン
7 大統領との第1回会見 8 ハル長官との初交渉 9 悪化してゆく1週間
10 ハル私邸の会見 11 運命のハル・ノート 12 交渉窮地に陥る
13 第2回の大統領会見 14 東条首相の米英駆逐発言 15 両元首親電交換を策す
16 歴史の背後に隠れる「イフ」 17 バルーク翁の好意 18 最後通牒を手交
19 抑留生活 20 思索数則 21 反省と観測
22 交換船 23 帰国 |
暗号について |
後篇 日米交渉
1 傍受・誤読・誤訳された電報
*東京裁判におけるキーナン判事の質疑
・1通の電信を突き付け、「これを知っているか」
・一読すると「今少しく時を稼いで」、「海軍大臣にも相談して」・・・全く見当がつかない
・「大統領より至尊に対し奉り」・・・米側は「至尊」が理解できず→「外務大臣」
・「今少しく時機のご猶予を得て」 → 「今少しく時を稼いで」
・「少なくとも内大臣まで御示しの上」 → 「海軍大臣云々」・・・・「内大臣」 → 「海軍大臣」・・「米内大臣」と取り違え
*11月5日東京発第726号(甲案に関する東京の訓令)の誤読(私が出発の日)
・「最終的譲歩案として」 → 「修正最後通牒として」
・但し書き「4原則は如何なる形でも → 「(4)原則と併記」・・・否定的に解釈された
18 最後通牒を手交
・東京都の国際電話通話時の隠語・・・急ごしらえで不完全
・最後通牒(覚書)の手交遅延の事実・・・タイピストを使えなかったから
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