暗号戦史
「リ行 作品」
作品名 陸軍省軍務局と日米開戦
著者名 保坂 正康
初出版:1978.6:講談社
「破綻――陸軍省軍務局と日米開戦」

発行日:1989.5.10
出版社:中央公論社
形式:中公文庫
目次
序章 「卿に内閣組織を命ず」
第1章 「対米英戦争は危険な賭けだ」
第2章 「鍵は乙案の第4項目にある」
第3章 「暗号は解読されている!」
第4章 「友人間に最後のことばはない」
第5章 「和解の可能性は5パーセントしかない」
あとがきにかえて(太平洋戦争開始前後の政治情勢)
*文庫版に追加 
ストーリーの概要
昭和16年10月17日から同年12月8日までの陸軍省軍務局の動きを克明に追ったドキュメント。
19月17日は、近衛内閣のもとで陸相だった東条英機に内閣組閣の大命が降下した日。陸軍が全面的に政治、軍事の大権を握った日と言い換えてもいい。それからほぼ50日後の12月8日は、日本軍が真珠湾に攻撃を仕掛けた日。日本の国策はこの50日間に一気に対米英戦に傾斜した。東条は首相兼陸相兼内相、大権を握り国策を動かした。その東条を支えたのが陸軍省軍務局の幕僚達だった。
陸軍省軍務局軍務課は、陸軍の政策決定集団、一方、陸軍の軍事的方針を決定し、それを実際に運用したのが参謀本部。
軍務課の石井中佐を中心にこの50日間の動きを追っている。
暗号について
第3章 「暗号は解読されている!」

アメリカは、日本の外交暗号を解読し、マジックと称し、大統領以下この情報を十分活用し、開戦前後の日米交渉に臨んでいた。
11月12日、石井の机に電報の束が届いた。野村がハルやルーズベルトに会ったときの模様が報告されていた。ある電報の文脈の流れの1箇所に目が止まる。「某閣僚は神に誓い懇親の間なるが故に君限りに告ぐるな次第なり」「米政府は日本は近日発動する確実なる情報を握り居り」
某閣僚とはウォーカー郵務長官のことだ。野村とは20年に及ぶ友人だ。彼はどこからこの情報をつかんだのか?石井は「電報が解読されている!」と感じた。
・日本の通信が傍受されているのか?
・政索集団にスパイが入り込んでいるのか?
・日本大使館の電報が解読され筒抜けなのか?支那で自分が米大使館の暗号を解読したように。
石井は、軍務課長・佐藤に報告する。佐藤は、「盗聴、解読はどこの国でもやっている。解読されて外交が不調に終わっても結構。むしろ好都合。戦争にもっていく理由になる」等主戦論者の佐藤は無視。
石井は決め手となる根拠がなく、そのままに・・・
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