暗号戦史
「セ行 作品」
作品名 戦争回避の機会は二度潰えた  (発掘 日米交渉記録) (「中央公論:2007.12」所収)
著者名 細谷 千博 × 佐藤 元英
発行日:2007.12
出版社:中央公論社
形式:雑誌
目次
 「なし」
ストーリーの概要
日本学士院会員・細谷千博氏と中央大学教授・佐藤元英氏の対話。

昭和16年8月、近衛は一身を賭し、険悪化した対米関係の打開に乗り出した。衝撃のハル・ノート提示に至る交渉プロセスに、和解成立の可能性を再検討する。(見出しから)

* 信発掘資料の信頼性
 ・ 「日米交渉経緯」:昭和17年(1942)の史料(627頁);占領軍に押収された記録文書で、外務省記録班(現・外交史料館)に密かに戻されており、最近発掘された。
 ・ 昭和21年(1946)に外務省が編纂した「日米交渉経緯ノ部」との差;
  ・ 「経緯ノ部」は、とうきょう裁判を意識して編纂されている。
  ・ 「経緯」は、戦争勃発当時、外務省アメリカ局1課長だった加藤俊一氏が記録。より忠実?

*戦争回避の可能性はあったか
 ・ 昭和16年4月16日の米「日米諒解案」提示から12月8日の真珠湾攻撃までの間に2回あった。
  @ 「近衛・ルーズヴェルト会談」実現に向けての動きの時点
  A 開戦直前、東條内閣時に日本側が所謂「乙案」を提示、米側が「暫定協定案」を作成した時点 
暗号について
* 「経緯」と「経緯ノ部」の暗号関係の差
 ・ 「経緯ノ部」は、東京裁判の時点では、アメリカの暗号電を日本側で傍受・解読していたことを知られたくなかった。そうでないように書いている。
 ・ 「経緯」は、その配慮が必要なく事実を記録している。「在京アメリカ大使館充てられた電報の解読文書も載録」

* 占領軍に押収されなかった外務省記録:「特殊情報綴」(147頁)の存在
 ・ 外務省が暗号を解読した記録。例えば、ハル・ノートの前に米が出す積りだった「暫定協定案」の内容。

* 来栖大使の帯びていた特命
 ・ 対米交渉案「甲案」を先ず暗号電報で送り、「乙案」も続いて送るが、備考部分の「仏印からの撤退問題」を削除して送る。
 ・ 来栖大使が「乙案」の前文を携行し渡米。・・・何故か!
 ・ 外務省・加瀬は米により日本の暗号電報が傍受・解読されていたのを知っていた。・・・従って全文を送らなかった。
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