暗号戦史
「セ行 作品」
作品名 セイロン作戦の一考察     英側はいかにしてセイロン島来攻情報を入手したか
著者名 横谷 英暁
発行日:2005.12.1
出版社:錦正社
編集:軍事史学会
形式:機関紙


目次
はじめに
1 誰が?
2 いつ、どのようにして?
3 どの電報を?
おわりに


ストーリーの概要
 1942年4月5日、セイロン島のコロンボが、次いで9日ツリンコマリーが、南雲機動部隊の攻撃を受けた。

それより少し前、セイロン方面に配備されていた英東洋艦隊は、事前に南雲部隊の来攻に関する情報を入手し、同部隊を待ち伏せしたが、予想した来攻日に誤りがあったため会敵することなく終わった。

この史実は、終戦から3年後の1948年に出版されたモリソンの「第二次世界大戦における米国海軍作戦史」の中で触れられた。
また、英海軍の公式戦史「海の戦い」、「対日戦」匂い手も日本艦隊の来攻情報の入手について触れているが、「誰が、どのようにして」獲得したのか書かれていない。

森史朗「海軍戦闘機3」では、草鹿参謀長が打電した電報が解読された。千早正隆「日本海軍の戦略発想」では、米海軍の暗号解読情報を英東洋艦隊に伝えた。鮫島素直「元軍令部通信課長の回想」では、暗号解読説を否定。

本論文においては、「誰が、どのようにして日本艦隊のセイロン島来攻情報を入手したのか、もし暗号解読であればどの電報が読まれたのか」について明らかにしたい。
暗号について
・ 1983年英公文書館から入手した、東洋艦隊長官・サマヴィル大将の報告書は、情報接受のことが記録されていたと思われる箇所が切り取られていた。(暗号解読の事実の公開はまずいから?)
・ 英海軍歴史家に問い合わせると、具体的な根拠の記載されている文書を紹介された。しかしそれは、前記の文書だった。
・ ルウィンの「日本の暗号を解読せよ」:イギリス通信情報班が、南雲らの接近を事前に知らせる貴重な警告を発した。」とある。
・ ラスブリッジャー等の「真珠湾の裏切り」:英海軍の極東に於ける諜報活動について記述。
・ 英海軍の極東における対日情報収集は、極東合同局(FFCB)がその作業にあたっていた。陸海空軍合同機関といっても、無線傍受及び暗号解読の面では、海軍が数的にかなり優勢であった。

・ ウィントンの「太平洋のウルトラ」:具体的な記述発表(1993年)
  日本側のコードを解読:DGはセイロン、DGPはツインコマリー、DSはシドニー、DPはダーウィン
  3月21日、JN-25の暗号解読成功、「DGに対する攻撃は4月1日頃」
  しかし、米海軍に知らせたのに、肝心に東洋艦隊には通報していない記述は疑問。
・ スミス著「天皇の暗号」:FFCBが解読したJN-25の情報を28日に東洋艦隊に通報。
・ 米のウルトラ情報:ウィントンの記述の誤りを明らかにすることが出来た。解読の結果の情報であることも明示。
*結論
 ・ 3月20日FFBCは、1航鑑機密第71番電の解読に成功。28日、DGをコロンボと特定、空母による攻撃と判断。
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