暗号戦史
「シ行 作品」
作品名 情報将軍 明石元二郎    ロシアを倒したスパイ大将の生涯
著者名 豊田 穣
発行日:昭和62年7月19日
出版社:光人社
形式:四六版
目次
プロローグ
第1章 怪物の片鱗
第2章 極東の風雲
第3章 謀略の手腕
第4章 亡国の民草
第5章 密偵の旅路
第6章 革命の狼火
第7章 勝利の女神
エピローグ、 わが謀略・情報戦論、 参考資料
ストーリーの概要
黒田藩旗本、明石助九郎の次男として元治元年に博多の大名町に生まれた明石元二郎は、1901年フランス公使館付陸軍、1902年ロシア公使館付陸軍武官として赴任、その間ロシア革命工作を行い、ロシアを混乱させ、日露戦争勝因の一大要因となった。 その間の明石の情報工作を中心に描いた小説。

 特に、「二重スパイと思われる女性を始め、数人の女性が登場し明石の工作に協力する」と言うストーリーは、服装に無頓着で女性とは無縁のような認識を覆す。

「目次の細部」
第1章:
*まむしの元二郎 *悪戯の総大将 *大物か屑か *出世コース *汚れの明石の異名
第2章:
*美人スパイ *ニースの巣窟 *ロシア帝国の野望 *官邸官僚の腐敗 *クロパトキンの来日
第3章:
*児玉源太郎の登場 *諜報活動への覚悟 *明治天皇の肖像 *二人の軍事探偵の最期
第4章:
*ナポレオンを偲ぶ *古戦場アウステルリッツ *女づれの偽装 *危機への予感 *かもめはかもめ
第5章:
*オデッサから来た女 *栄華の名残り *酒場ベルリンの客 *マルモラ海の落陽
第6章:
*暗いニュース *反ロシア帝政党大会 *冬宮砲撃の秘策 *血の日曜日 *セルゲイ大公の暗殺
第7章:
*最期の使命 *勇ましい決議 *不思議な女 *武器秘密輸送 *諜報戦の鬼
暗号について
本文には、暗号に関する話は出てこない。巻末の「わが謀略・情報戦論」中、「太平洋戦争と情報」に敗因は「物量」のみなく、「情報」が大きな要素であると分析し、その中でも暗号戦の劣勢を指摘している。
・ 強力な暗号解読班を持つアメリカは、開戦前、既に日本の軍事、外交の暗号を解読していた。宣戦布告の「最後通牒」は開戦前に解読されていた。
・ ミッドウェー海戦においても、連合艦隊の作戦計画は、その殆どが解読されていた。日本の暗号解読能力はくらべものにならないほどお粗末だった。この敗北により、情報の重要性に目覚めるべきだった。
・ ソロモン海戦でも同様。
・ 山本長官の戦史事件も同様。この時も暗号を変える事無くそのまま使用するお粗末さ。

しかし、日露戦争当時は、情報の重要性を認識する優秀な参謀がいた。また、そのような素質を見抜いて運用した。

* 目新しいことはないが、小説の巻末にこのような論文を付記することは珍しいのではないだろうか。
(区分からすると小説だが、暗号に関しては、戦史の分析であるので、暗号戦史に掲載した。)
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