暗号戦史
「ス行 作品」
作品名 スパイ!
著者名 R・ディーコン & N・ウエスト  (Richard Deacon with Negel West)  (訳:水木 光)
発行日:S56.1.31
出版社:早川書房
形式:四六判
目次
1 ゾルゲ――東京スパイ網
2 ヴェンロー事件
3 シンシア
4 二重スパイ――キャンプ020
5 スタシンスキー――殺人機械
6 ジョン・ヴァッサル
ストーリーの概要
現代史の傑出したスパイの一人、リヒアルト・ゾルゲ。
開戦直後、適切な措置をとらなかったためにヨーロッパにおける英秘密情報機関のスパイ網を壊滅にいたらしめたイギリスの二人の工作員。
ナチス・ドイツに対する活動で、あのマタハリさえこの美人スパイと比べたら新米としか言いようのない目覚しい活躍をしたシンシア。
同じく戦時中、イギリスのために二重スパイとして活動したドイツ青年のテイト。
KGBの暗殺スパイ、ボクダン・スタシンスキー。
東西冷戦下、ソ連の恐喝に屈してスパイとなったジョン・ヴァッサル。

これらあらゆる型の7人のスパイについて、その人物と像生命をかけたスパイ活動を綿密に分析し、スパイの政治的・軍事的役割とスパイの心理、「スパイの動機は何か?」「スパイ活動を成功させるものは何か?」等を語っている。
暗号について
まえがき:
スパイ活動の世界の隠語:スパイと秘密情報機関員、スパイ捜査員を"幽霊(スプーク)"と言う。スパイはいろんな意味で幽霊に似ているから。

1 ゾルゲ――東京スパイ網
 ・ 一味の暗号名:ゾルゲ―”ラムジー”、尾崎秀実―"オットー"、マックス・クラウゼン―”フリッツ”、ブランコ・ドゥ・ヴーケリッチ―”ジゴロ”、宮城与徳―"ジョー"
 ・ 日本が新しい秘密の通信方法の開発と他国の暗号通信の解読で驚くべき進歩を見せたのを十分い知っていたので、通信は常に問題だった。
 ・ 日本のアルファベットは50あまりの仮名と2000の漢字から成っていて、日本側は暗号電報をローマ字で送ったので、日本の暗号メッセージの解読の仕事は比較的単純だったと言う意味でゾルがは幸運だった。アメリカもこうした日本の暗号通信の大半を同じく容易に解読したが、彼らの欠陥は一部のメッセージを解釈する力がなかったことと、ひどい不注意と政治的判断力に欠けていることだった。これに反し、ゾルゲは個人的経験と尾崎の博識からそのメッセージの意味を正確につかんだ。
   
2 ヴェンロー事件
  英のスパイ二人がドイツに拘束された事件の全貌を描いたドイツの特別報告「英秘密情報機構」の中の暗号記述。
 ・ 空軍部門の諜報に関し、「長、ウィンター・ボトム(飛行団長?)、彼には協力者として二人の将校がいる。アダムズともう一人。」これは第2次世界大戦の暗号解読の主要な人物の一人であるF・W・ウィンターボーザム空軍大佐のこと。
 ・ 暗号および解読部、同部の部長の名は分からない、ジェフリーズという名の退役大佐が働いている。
 ・ 暗号解読部門をクイーン・アンズ・ゲートとブロードウェーからブレッチリーに移転させる計画がある。

3 シンシア
 ・ シンシアは暗号名、本名はエイミー・エリザベス・ソープ。
 ・ ポーランド外相ユゼフ・ベク大佐の腹心の部下をたらしこむ。彼はあらゆる種類の秘密文書を読むことができた。遥かに重要だったのは、彼がシンシアにドイツの"エニグマ"暗号機械の詳細を知らせることができることだ。
   以下、エニグマの秘密を解決するいきさつが詳細に描かれている。
 ・ 英安全保障調整局(BSC)は、シンシアにイタリアの海軍暗号体系を入手する任務を与えた。シンシアは、ワシントンのイタリア大使館の海軍武官アルベルト・ラーイス提督を誘い込む。
   らーいすは比較的簡単に、イタリア海軍の語句暗号と文字暗号書を二重暗号化表とともに彼女に渡すことを約束。
 ・ 次は、ワシントンのヴィシー・フランス大使館の暗号の秘密入手の任務を与える。シンシアは、大使館の新聞係官シャルル・ブルースに目を着け取り入る。
   ブルースが金に困っていることに目をつけ、彼の給与の不足分を補うことで、大使館のすべての通信および平墳電報の写しを入手する約束をする。
 ・ ヴィシー・フランスの海軍暗号の入手を命ぜられたシンシアは、大使館の暗号質に侵入し、暗号書の写真を獲ることに成功する。
   以上のような
暗号情報を取る軽易が具体的に書かれており、必読の部分である。
   
4 二重スパイ――キャンプ020
 ・ ドイツの工作員ヨースタ・キャロリは、イギリスに空中から降下し侵入する任務を与えられ、携帯無線送受信機の操作方法や落下傘降下したスパイ用の秘密インキ、通信技術、暗号書類といった装備についての詳しい支持を与えられた。
 ・ 二重スパイの活用に際し、「元の主人にニセのメッセージを送ることに同意してるように見えるスパイが、無線送信の中に何らかの警告の暗号を入れていないか心配」した。
 ・ イギリス側がドイツの暗号書類を入手したのではないかと思ったかもしれない。英秘密情報機関はすでに"エニグマ"として知られるドイツの暗号体系を解読していて、彼らの通信を傍受、解読するウルトラ組織がブレッチリー公園から運営されていた。
 ・ 少し軽率で、機密情報を漏らす”メアリ”と言う名の空想上の女友達をテイト(二重スパイ)に与え、ドイツ側に見破られないようにした。実は、"メアリ"はある省の暗号課に働く実在の女性だった。

5 スタシンスキー――殺人機械
  暗号については特に記述なし。

6 ジョン・ヴァッサル
 ・ 最近は、地位の低い、重要でない人物で、たまに秘密を漏らすことができるような場所にいる人が、スパイ徴募者の恐喝にかかりやすくなった。現代のような暗号、暗号室、コンピューター、テープレコーダー、隠しマイクロカメラその他スパイの小道具がそろった時代では、何万とは言わないが、何千人ものありきたりの人がスパイ徴募者の利用する対象になった。
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