暗号戦史
「ス行 作品」
作品名 スパイ伝説   出来すぎた証言  (Unreliable Witness:Espionage Myths of WWU)
著者名  ナイジェル・ウエスト  Nigel West   (訳:篠原成子 解説:岩島久夫)
発行日:1986.10.20
出版社:原書房
形式:四六版
目次
序章 「スパイ伝説」はなぜ生まれたのか
第1章 コヴェントリーの爆撃
第2章 真珠湾奇襲
第3章 カナリス提督
第4章 戦艦「ロイヤル・オーク」撃沈
第5章 スイスを舞台にした情報戦
第6章 ディエップ作戦
第7章 二重スパイ「シセロ」
第8章 オランダの裏切り者
第9章 ニュルンベルク爆撃
第10章 「イントレピッド」と呼ばれた男
終章 工作員たちに答える権利がある。
解説: アクション・ジス・デー
ストーリーの概要
情報活動という秘密の世界は神秘のヴェールに包まれている。よく知られた事件について本が書かれるたびに、誤謬が入り込み、歴史は歪められていく。役所が役所が記録をなかなか整理しないので、歴史家や作家たちはお互いの資料に頼りがちになり、間違いを更に上塗りすることになる。
いったい、誰の意見が正しいのだろうか。実際は何が起こったのだろうか。
主として第2次大戦にまつわる事件の幾つかを調査し、その由来を解き明かす。近年、秘密文書の解禁も増え、史家たちはそれまで下していた評価の多くを修正している。

目次の細部:
第1章 コヴェントリーの爆撃:チャーチルはどこまで知っていたのか。
 ウィンターボザム大佐の回想/「それがウルトラを守る唯一の方法だった」/空軍省情報部が得た四つのドイツ情報源/空軍参謀がチャーチルに知らせたこと/「ウルトラ」にはコヴェントリーの名前はなかった

第2章 真珠湾奇襲:警告は無視されたのか
 「マジック」情報源と真珠湾奇襲/二重スパイを管轄するXX委員会/「トライシクル」に与えられた調査内容/ドイツが真珠湾に強い関心を持った理由/トーランドが引用した「質問状」は誤解を招いた/ポポフの「日本の攻撃を予知」はウソ/「ケント」じけんとトーランド

第3章 カナリス提督:裏切りかそれとも英雄だったか
 カナリスをめぐる三つの謎/(その1)マタ・ハリに会ったか/カナリスがマドリッドにいた48時間/複雑に入りまじる「マタ・ハリ」神話/(その2)メンジスに会ったか/「嘘のボディガード」のウソ/(その3)カナリスはイギリスのスパイか/メンジスとカナリスが会った、という説/「暗黙の了解」でカナリスは情報を流した

第4章 戦艦「ロイヤル・オーク」撃沈:スパイは実在したのか
 [W]という頭文字の時計屋が姿を消した/[W]ヴェーリングという元ドイツ海軍大佐/シュレンベルグシュレンベルグ回想録の中のヴェーリング/かくしてスカパ・フロウの神話化は進んだ/「スパイは実在しなかった」というスナイダー説

第5章 スイスを舞台にした情報戦:「ウェルテル」は誰だったのか
 スイス連邦警察が捕らえたソ連情報網/「ルーシー」の情報伝達ルートは?/「ベルリンの小さな陰謀団」との交信/モスクワに戻った「ラドウ」の回想録/「るーしー」の情報源をめぐる二つの説/CIA文書にみる「ルーシー」リング/行き続ける「ルーシー」神話

第6章 ディエップ作戦:二重スパイが計画を漏らしたのか
 惨敗に終わった「ディエップ」の奇襲/「敵のスパイが情報を伝えた」/(その1)ロヴェル説/(その2)パイス「欺瞞の鏡」/(その3)モズリー「ドルイド」/ロヴェル説のまちがい/二重スパイの裏切りはなかった

第7章 二重スパイ「シセロ」イギリスの欺瞞戦略だったのか
 映画「ご本の指」の主人公/「シセロ」は欺瞞戦法か安全対策上のミスか/「シセロ」は正真正銘のスパイだった

第8章 オランダの裏切り者:リンデナンスは二重スパイだったのか
 ナチ占領下のオランダでの不幸な事件/抵抗運動の組織者がドイツのスパイ/「連合国の二重スパイ」という説/神話作りのかっこうの領域

第9章 ニュルンベルク爆撃:ドイツは作戦を知っていたのか
 イギリス空軍にとって最大の惨事/二重スパイがドイツに情報を流した?/「ガルボ」はそれを否定した/ドイツ空軍にとって理想的な天気だった

第10章 「イントレピッド」と呼ばれた男:「すさまじい活動や作戦を網羅」した書類/チャーチルは暗号を選んでいない/「ウルトラ」についての誤解/ハイドリッヒ暗殺とスティーヴンソン卿/ペーパーバックでは削除された「マドレーヌ」の話/めだたせるものや拡張はいらない
終章 工作員たちに答える権利がある。
 想像力はあまりにも自由に・・・/一人の人間の信用を保つために

解説: アクション・ジス・デー
暗号について
第1章 コヴェントリーの爆撃:チャーチルはどこまで知っていたのか。
 チャーチルは暗号解読「ウルトラ」を守るためにコヴェントリーの爆撃を知っていながら何も防護策を採らなかったという通説は正しいのか?
 ・ F・W・ウィンターボザム著「ウルトラ・シークレット
 ・ アントニー・ケイヴ・ブラウン著「嘘のボディ・ガード」
 ・ ウィリアム・スティーブンスン著「イントレピッドと呼ばれた男」等
 ウルトラの暗号解読電報には、コヴェントリーの名前はなく、ドイツの通信兵が誤って送信した平文電報に「コヴェントリー攻撃」があったと記している。いずれにしろ、チャーチルは傍受した電報からコヴェントリー爆撃を承知しながら、対策をしなかったと共通して述べている。

 しかし、最近解禁になった、空軍省の書類により実際は異なり、空軍の情報分析によりドイツの爆撃機の進攻方向・時期が判明し、空軍により誤った方向に爆撃機を誘導する施策がなされていたのである。従ってチャーチルはウルトラを守るためにコヴェントリーを犠牲にしようとしたのではなかったという事実が判明した。

第2章 真珠湾奇襲:警告は無視されたのか
 ルーズヴェルト大統領は、日本の真珠湾攻撃をどの程度事前に知っていたのか。 マジックにより解読した外交暗号には、「真珠湾攻撃」を示す内容はない。宣戦布告の文書である。
ホノルルで傍受した重要度の低い「J-19」電報には、真珠湾に日本が異常な関心を示していることが分かった。しかし、この電報の解読は優先順位が低く開戦前には解読できたいなかった。

 1972年に発刊されたジョン・マスターン:「ダブル・クロス・システム」:
 「トライシクル」という二重スパイの記述から、ドイツに指示文書に「真珠湾の軍事情報の収集」が示されており、そのスパイからCIA長官に報告されていたはずである。従って、長官から大統領にも報告されたはずで大統領は、ドイツしいては日本軍による真珠湾攻撃の事前情報は入っていた。ということだが真実は?
 CIA長官はそのスパイを最初から信用しておらず、情報を無視したということが事実な様だ。

その他の章にも、部分的に暗号電報のことが触れられているが、記述するほどのもはない。
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