海外の暗号小説
第22話 世界標準暗号 三菱電機・松井充氏の活躍 H17.12.24
戦史を読む限りにおいては、戦前までの日本の暗号レベルは高かったとは思えない。米国等連合軍と戦うには、あまりにも脆弱な暗号体制だったと思える。外務省や海軍の暗号は解読され、日本の外交・戦略の基本が次々に漏れ、陸軍の一部の暗号も解読され局地的な作戦に支障を来たし、日本の各種戦略・作戦に大きな影響を与えたことは各種文献が物語っている。但し、陸軍の無限乱数暗号は別である。
戦後の暗号については、資料がほとんど公開されていないので不明である。外務省や自衛隊が強度のある暗号を使い、他国に解読され日本の外交や安全保障に影響を与えていないことを祈る。
日米経済交渉において、日本の暗号が米のエシュロンに解読され不利な交渉に陥ったというニュースを見たことがあるが・・・
しかし、現代暗号の時代になり「情報通信に使う暗号技術」においては、日本の技術者が開発した暗号が高く評価されている。


以下、日経産業新聞:2005.11.28から抜粋
三菱電機情報技術総合研究所情報セキュリティ技術部長・松井充氏(44)が開発した暗号化手法(アルゴリズム)「MISTY(ミスティー)」が、今年4月に開かれた国際標準化機構(ISO)において世界標準規格の一つに選ばれたという。
・ 1995年にMISTYを開発してから10年。
・ 認められた理由:情報の暗号化にかかる時間が短い。解読が極めて困難。小型化し易い。(わずか数ミリ角のICで暗号化)
・ MISTYを改良した[KASUMI]は、NTTやボーダフォンの第3世代携帯電話の標準規格
・ イスラエルの「差分解読法」を改良・研究し、「線形解読法」を考案。米暗号「DES」を解読。
・ 2005.9.16:MISTY開発10周年記念イベント実施
  考古学者・吉村作治氏と対談。古代エジプト文字「ヒエログラフ」の解読等暗号に情熱をかけた人類の歴史を語る。
  暗号の将来:「数学ではなく物理学の領域に入った」と述べる。特に究極の暗号といわれる量子暗号が登場したから。

進化し続ける暗号技術:セキュリティ技術の役割
1 情報の秘匿
2 データ改ざんの防止
3 個人認証

どちらかと言うと、暗号と言う正面においては米国の技術者による開発が先行していると思われがちだが、松井氏のように日本の技術者が世界のトップレベルで活躍されておられることは、誠に心強い限りである。

また、解読技術・体制については、米NSAがあまりにも巨大すぎて比較の対象にもならないだろうが、日本の解読体制がどうなっているのか全く見えてこない。防衛庁の情報本部の人員から判断するに恐らく寂しいことであろう。
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