海外の暗号小説
第26話 お粗末!海上自衛隊「秘情報、暗号資料」ネット流出 H18.2.26
あまりにもお粗末、無様であきれ返る。
 海上自衛隊の護衛艦の暗号や訓練関係の書類、隊員の住所録等、秘密文書を含む資料が、インターネット上に流出した。
16日にネット掲示板で「海自の機密情報が漏れている」との書き込みがあり海上自衛隊の保全監察隊が調査開始。しかし、流出を確認したのは21日になってからだった。こんなに時間がかかるなんて・・・・

1 関係部隊(艦船)
 海上自衛隊佐世保基地/第23護衛隊所属、汎用護衛艦DD-132「あさゆき」

2 犯人
 電信室勤務、海曹長、41歳

3 経緯
 何時かは不明であるが、海曹長が護衛艦内で使用しているデータを、上司の許可無く(常識ある上司なら許可するはずがない)CDに保存し、自宅にて私用パソコンにそのデータを移した。そのパソコンからファイル交換ソフト「Winny」を介して機密データが流出。
 そのパソコンが、「仁義なきキンタマウイルス」というウイルスに感染したためと言う。名前も怖ろしいが、ネット上へ無差別に情報を流出させるマジで怖ろしいウイルスだと言う。
 電信室は多くの秘密情報を扱うことから、立ち入りが認められている通信員は通常の隊員以上に機密保持を求められており、この事件は海自のずさんな情報管理が露呈した。
 同艦では、電信室は戦闘情報指揮所(作戦室)より秘密度が高い場所と位置づけられている。海曹長など通信員は、許可を得て「極秘」までの秘密文書を取り扱う権限を持つ

4 流出した情報:厚手ファイル10冊分程度(約1000枚分)
 ・ 「全般」:国防上、超重要な機密文章が多数含まれ、いずれの文章にも赤字で「極秘」「秘」といった印が付されている。
 ・ 「暗号」関係: 「暗号関係」と題されたファイルには100点以上の超機密文章が存在。
 自衛艦を識別するためのコールサイン、射撃訓練結果(距離計測暗号)連絡用「側方観測換字表」、「任務、目的記号」というアルファベットと数字を組み合わせた暗号解読表とみられる資料、非常用暗号書・乱数表等文書名一覧表、暗号解読機と思われる「符号変換装置」の操作手順、「極秘」と記された電文の受信記録、英文の暗号らしき文章
 ・ 「運用・訓練」関係:「監視経過概要」・船舶を追跡したと思われる記録(「本艦の258度、38マイルに探知」、「情報収集A法発動」「目標との距離を1000ヤードつめる」)、電話番号一覧(「船舶電話番号」「衛星電話番号」等)、「非常呼集連絡表」、「艦内作業予定」、「個人配置表」、「勤務表」等
 同艦に搭載されている通信機器の使用手順書やイージス艦を含めた海上自衛隊の主要艦艇がどの種の通信機器をいくつ搭載しているかがわかる一覧表、海上自衛隊の各種通信機器の問題点や疑問点、弱点をまとめた冊子
 ・ 「個人情報」:隊員約40人分の本籍・住所・家族構成・最終学歴・宗教等の個人情報、福利厚生に関する内部資料や隊員へ配布する注意書き
 20代海士長の「供述調書」もあり、「0230頃Barに行きました。そこではカクテル2杯を飲んだと思います。(中略)ウトウトと寝てしまい通信士の自宅に0725に連絡があって、早急にタクシーに乗り艦に向かいました」と、寝坊の顛末(てんまつ)が事細かに記載されているものもあった。
 ・「その他」:「ジュース・アイス争奪戦」といったお遊びの資料まで多岐

5 所感
 自衛隊においては過去にも、あるいは他官庁・民間企業において毎日どこかが、この「ウィニー」で情報が漏洩している状況なのに、自衛隊においては隊員の指導、管理者の管理体制はどうなっているのだろうか?事件が起きるたびに規則を改正し、体制を強化したと発表するが、魂が入っていない。
 犯行を行った海曹長は、私物のパソコンにその種ファイルを入れればウィニーを通じて漏洩することはウィニーの特性から分かっていたはずだ。また、察するにほとんどの資料は、海曹長が自宅に持って帰って作業するようなものではないと思われる。漏洩することを前提で行った確信犯ではないかと思う。

 また、電信室の責任者たる幹部は何をやっていたのか。秘密区分のある暗号・情報資料等、部下がどのように扱っているのか、把握していないのか。秘密区分のある資料、暗号書等の取扱は複数で実施するのではないだろうか?
 担当幹部は恐らく管理能力がないか、使命感(国家防衛に携わっている)が欠如しているのであろう。最近の幹部自衛官は部下を怒れない、指導できない、見て見ぬふりをすると自衛隊の人に聞いたことがある。

 この問題は、日本の国内の問題だけではなく国際的問題でもある。特に米国との関係。自衛隊の中でも、米国と一番密接で、システムの共通化が進み、共同訓練も他自衛隊に比べ、格段の錬度にあると言う。今回の件は、米国の信頼を失う最悪の事態だと思う。情報管理、暗号管理が出来ていない自衛隊に真に必要な情報をくれるのであろうか?
 これから,BMDを整備していくため、多額の税金を投入するようだが、米国から必要な情報・資料が貰えなければ宝の持ち腐れだ。

 暗号の変更等、必要な処置は当然とっていると思われるが、再発防止に万全を期してもらいたい。
米国のNSAでは、部屋の退出時には、CDやフロッピー等記憶媒体等の所持点検を確実に行い、絶対に持ち出しの出来ない制度を確立していると言う。
 日本は、最近はやたらに個人情報の保護だ、プライバシーの侵害だ等個人・私用を重視し、本質を誤った方向に導く世論特にマスコミの論評が多く、人間社会の理想、国家としても尊厳から遠ざかっていくような気がする。

 自衛官として勤務している以上、個人よりも組織である。個人を尊厳するのは基本的には重要だが、国家の安全保障のほうが数倍重要であることを前提に、使命感を持って勤務して頂きたいものだ。


 イラクの復興支援、災害派遣等で活躍し、自衛隊の評価・期待が高まる中、一人の隊員(防衛施設庁の事件を含めればかなりの数だが)の過ちで、汗を流している自衛官の労を無にしてはならない。
 そして、自衛隊・外務省等現在の暗号体制は細部不明であるが、この事件を機会に、日本の暗号体制を揺るがすことのないよう万全を尽くすよう期待したい。

 (事件の概要は、各種新聞・ニュースから)

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