海外の暗号小説
第35話 外務省公電を改竄・・・日米開戦 最後通牒 H19.1.2
産経新聞平成18年12月30日(土)付けニュースによる。

このホームページの暗号戦史で紹介する本にも良く出てくる話であるが、昭和16年12月の日米開戦で最後通告の手渡しが遅れ、米国から「だまし討ち」と非難された問題で、戦後、この最後通牒の公電が改竄され、外務省編纂の公式文書「日米外交文書」が誤ったまま収録していることが判明した。

外務省は、「公電の原文が無い」と説明していたが、、産経新聞の調べで国会図書館に保管されていることがわかり、判明した。
原文にある「14部に分割して打電する」とした重要部分を削除したもの。

削除されていたのは、901号電の2項部分:
「右別電ハ長文ナル関係モアリ全部
(十四部ニ分割打電スベシ)接受セラルルハ明日トナルヤモ知レサルモ・・・」

終戦直後の昭和21年2月付外務省編纂「外交資料・日米交渉・記録ノ部(昭和16年2月ヨリ12月マデ)」に収録された901号電の手書き写しでは、「
(十四部ニ分割打電スベシ)」の部分が削られている。
日米外交文書はこれを基に平成12年に出版された。

公電の原文によれば、大使館も最後通告電が計14部に区分され送られてくることを事前に承知していたことになる。
当時の電信業務では、全部が分割されたかが分からない状況では、電信担当官を帰宅させてはならなかった。
逆に、事前に14部に区分されたことが分かっていれば、残り1部だけを待って徹夜させるのは行き過ぎ、となるとのこと。

外務省の改竄の真の意図は不明であるが、元ニュージーランド大使の井口氏の推理では、「東郷外相を救うため、一切の責任を大使館側に押し付ける意図があったのではないか」とする。

その他、公電の写真、細部の推測、外務省の体質等書かれている。

これにより、大使館における公電の暗号処理等に対する見解は見直されることになるであろう。
米側の暗号解読や、各種関係書籍等から公電は14部に区分されていたことは結果論として周知の事実であると思うが、このような外務省による公電の改竄があったということは驚きである。

手交遅れの事実は逃れないが、責任論についての議論は起きるのであろう。


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