海外の暗号小説
第55話 通信保全会賛歌 H20.1.29
旧陸軍将校と陸上自衛隊幹部OBの会に偕行社という会がある。

偕行社が、会員に毎月発行している機関紙が「偕行」であり、先日某図書館で見つけた。
偕行社の趣旨は、次の通りであると書いてある。

『明治10年(西暦1877)2月15日、当時約3000人に及んだ陸軍将校の一心同体を目指し、会合の場所として東京の九段上に集会所が設置された。これが偕行社の創立であり、実に西南戦争の僅か前であった。
後に各師団所在地にも偕行社が拡充されていった。その結成は、現在の陸上自衛隊幹部の「修親会」や航空自衛隊幹部の「幹部連合会」と同じように、陸軍将校の修養研鑽と団結を主な目的とした。
「偕行」の意味は「共に軍に加わろう」ということで、詩経・無衣の篇・第3章の漢詩から採用したものという。』

歴史のある会ということが分かる。その機関紙「偕行」の平成18年11月号に面白い記事を見つけた。

それが、今回の主題『通信保全会賛歌』である。
陸上自衛隊の陸上幕僚監部通信課に通信保全班長として勤務されていた「竹原虎男」と言う方が通信保全会20周年を祈念して作詞されたと紹介。
それ以上の詳しいことは分からないが、この詩を見ると、旧陸軍から陸上自衛隊に繋がる暗号の歴史を推測することが出来る価値ある詩と思える。実際に責任者として暗号業務に携わって来られた人にしか作詞できない力作かと思う。
ご本人には了解は取っていないが、暗号に興味のある方に是非知ってもらいたく紹介する。

1 
過ぎし昔を顧みて 通信文の内容を 秘匿の手段で生まれたる 暗号と言う方式の 強度は国により相違
2 暗号強度を列強の 実情如何と対象を 軍通信に指向せば 各国ともに強弱が 軍作戦を左右する
3 さて我が国の陸軍は つとに研究した結果 其れは絶対不解読 無限乱数方式を 採用したるは誰なるか
4 その名は原と釜賀なる 両先輩の他ならず 大戦中は米国が 注目してはその首に 賞金かけたのも事実
5 我に利有らず大戦に 負けたが陸軍暗号は 無敵を誇る実績を 戦勝国の米国も 認めた末に脱帽す
6 自衛隊なる編組でも 両先輩の教え受け 旧軍伝統受け継いで 業務に精励した組織 その名は通信保全班
7 世は機械化の進展が 暗号界にも影響し 強度の保持を核心に 技術結集暗号機 革命児として完成す
8 無限乱数方式の 運用するに必要な 膨大量の乱数表 補給に代えて規約表 配布で済んだ暗号機
9 更に時代の寵児たる コンピューターが加わって 無限に拡張強化する 近代網に呼応する 暗号の任いや重し
10 新憲法下外征の 軍たり得ない自衛隊 軍暗号が実戦に 活用の場は無かれども 外交暗号には寄与す
11 米ソの冷戦終焉後 世界情勢一変し 組織縮小免れず 自衛隊にも波及して 通信保全班閉鎖
12 業務は存続しているが 暗号重視の認識が 薄い風潮遺憾なり 唯望むのは暗号の 当時者堅持の強い意思
13 職を離れたOBが 毎年末に集いては 旧交温めその昔 偲ぶ面映ゆ会場に 懐旧談の花が咲く
14 世の変遷を眺めつつ 各自健康に留意して 限界極める時期までは 通信保全会持続 一層固めん団結を
15 通信保全会今年 20周年迎えたり 毎年加齢を積み重ね 会員平均年齢は 喜寿がまじかに肉薄す
16 互いに歳は老いたれど 気力は未だ衰えず 暗号魂堅持して 意気軒昂を誇るのは 我等が通信保全班 我等が通信保全班

*原氏と釜我氏に米軍が賞金をかけていたとは!!
*陸上自衛隊の陸上幕僚監部の通信保全班が閉鎖! 何処で暗号施策をしているのだろうか。

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