海外の暗号小説
第58話 「山の地名 足で解読」 登山家:古川純一氏 H20.3.13
日経新聞:2006.12.3の「文化」欄から

登山家の古川氏が、30年以上に渡り、全国各地特に日本の山岳地域の地名の研究をしておられ、机上の研究のみならず、必ず現地に足を運び、自分の目で地形を確かめ地名の起源を探究しているという。
その研究成果は「日本超古代地名解」(彩流社)にまとめられているが、更に地名の解明に努められると言う。

直接的な暗号ではないが、その解明に至る道筋は、暗号解読に通じるものがあると思い、紹介する。

足柄の最後の「ラ」は、峠を意味するチベット語に由来する。
浅間山の「アサ」は、煙を意味する古代メソポタミアのウル語からきている。

ヒマラヤ登山にネパールに行った昭和50年、現地のネパール人の一言「名前」のことを、「ナム」と言ったことから、チベット語と日本語のルーツは繋がるのではないかと思った時から研究が始まった。
チベット語の辞書から日本の地名に共通点があることに気がつく。

・峠はチベット語で「ラ」、日本の峠名に「ラ」の発音がつく例が多い:倶利伽羅峠、修那羅峠、足柄(峠)

宮崎県高千穂で、神話に出てくる地名がアイヌ語で解明できた。

「槵蝕(クシフル)」と言う地名が3箇所あったがどういう意味か?:アイヌ語で「クシ」は「向こう」、「フル」は「丘」。つまり、「クシフル」は「向こうの丘」。現地で確かめると、3箇所とも川があり、その向こうに丘がある地形だった。有名な高千穂神社も「槵蝕」の峰の中腹にあった。

山形県と秋田県の県境にある「鳥海山」:地名辞典では「鳥海湖」と言う名の火山湖に由来するとある。
しかし、鳥海湖は標高1500メートルの高地にあり、水鳥がそこで生活することは考えられない。
象潟町役場で、町史を調べ、象潟一帯はもともと平均水深1.8mという浅い汽水湖だった。松尾芭蕉もその風光明媚な景勝を奥の細道で読んでいる。
1804年、大地震で象潟が2.4mの隆起し、汽水湖を消滅。鳥海山の鳥海はこの汽水湖のことだった。東西1km、南北2kmの大きな汽水湖では、2万羽に及ぶ水鳥が越冬していたと見られる。「鳥海」の名にふさわしい。

困るのは、人が住まなくなったために地図から地名が消滅すること。国土地理院の長野県「大町」5万分の1地形図の1971年版と90年版を比べると、掲載されている地名が、100ほど減っている。

成る程、良く研究しておられる!!
何気なく使っている地名に深い由来、因縁があることは、古川氏のような研究によらなければ永久に分からなくなってしまうのであろう。正に「解読」である。

今までの研究に敬意を表するとともに、今後の研究を楽しみに期待したい。
inserted by FC2 system