海外の暗号小説
第61話 母と作った石垣方言辞典:宮城 信勇氏 H20.5.7
日本経済新聞:平成20年5月2日、文化から

那覇市文化協会顧問・宮城信勇氏の30年に亘る研究の成果が「石垣方言辞典」で、伊波普猷賞に続き、吉川英治文化賞を受賞したと言う。

「ありがとう」は「ニーファイユー」、「こんにちは」は「ミシャーロールンネーラ」。

沖縄の父と言われた昭和初期の学者・伊波普猷の弟で、詩人・伊波月城は「石垣方言などの八重山方言はフランス語に似て、沖縄方言の中でもとりわけ美しい』と語ったと言う。
同じ方言でも、本島、宮古、石垣では方言が異なる。しかし、
きちんとした石垣弁を話せるのは70歳以上のお年寄りで数少ない。
氏は、30年に亘り、石垣方言を調べ、一万七千六百語を収めた「石垣方言辞典」(沖縄タイムス社)にまとめた。
氏は87歳、正確な石垣方言はいささか心もとない。明治24年生れの母から聞き取り、調査。
その母は、80歳で「八重山生活誌」出版、民族文化に詳しい。
表に石垣方言、裏に共通語を書いたカードを作る作業。

調べていくうちに思わぬ発見も!
例えば、万葉集に二回登場する「若月」と言う言葉、共通語では「みかづき」とよむ。石垣方言には「バカヅキ」という三日月を指す言葉がある。石垣では「ワ」は「バ」に変わるので、正に「バカヅキ」は「若月」のことだろう。
共通語では意味にあわせて読みが変わっていったのに対し、石垣では昔の読みが残ったのではないか。
共通語から見れば、石垣方言は外国語のように思われるかもしれない。・・・・

言葉は風土を表すことを改めて知った。石垣方言の「カジヌフクン(風が吹く)」は暴風を指す。普通の風は「カジヌスグン(風がそよぐ)」。台風が多い地域での暮らしが言葉の使い分けになっている。
共通語の「愛する」に当る石垣方言は、「ウモーン」「カナサシゥン」「アタラサシゥン」など数多くある。

と言うことで、この文を読み、太平洋戦争で米軍がインディアンの
ナホバ族を使い、通信の秘匿に役立てたと言う話を思い出した。
ナホバ族の言葉は、あまり歌人にも分からない、ましてや日本人には全く理解できないだろうと言う前提で、ナホバ族の言葉を秘匿略号的、第1線の電話に使用したという。
正に暗号である。

この石垣方言は、日本人でも分からないであろう。今では、石垣島の人でも分からないほどなのだから。
宮城様、ご苦労様でした。
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