読売新聞 H21.1.6 「日本語日めくり」から
「ふたつもじ 牛の角もじ すぐなもじ ゆがみもじとぞ 君はおぼゆる」
後嵯峨天皇に皇女悦子内親王が幼いころ贈った歌・・・徒然草所収
この意味は何でしょうか?
答:恋しく・・・「ふたつ文字:こ」、「牛の角もじ:い」、「直ぐなもじ:し」、「ゆがみもじ:く」
それぞれ平仮名の形を表している。「恋しく」思う気持ちを伝えたものだと言う。
旧仮名遣いでは「こひしく」であるが、文字を覚えたばかりのので発音通りに書いたとの解釈・
もっとも先端が曲がった角なら、「い」ではなく「ひ」に見立ててもよさそうだと注釈。
この記事から暗号を感じた。
悦子内親王が暗号と思って書いたわけでもなかろうが、正に暗号であろう。
昔の人(平安時代)は、歌(和歌)にこのような言葉遊び、折句と言う技法を考えて詠っているようだ。
各句の頭に分置するものを「冠(かむり)」、末尾に置くものを「沓(くつ)」といい、両者を同時に用いたものを「沓冠(くつかむり)」という。
「冠」の例:
「小倉山 峰立ち鳴らし なく鹿の へにけむ秋を しる人ぞなき」(古今集、紀貫之)
最初の文字を拾うと「おみなえし(女郎花)」
「沓冠」の例:
「よもすずし ねざめのかりほ たまくらも まそでも秋に へだてなきかぜ」(兼好法師から頓阿へ)
最初の文字を拾うと「よねたまへ」 最後の文字を逆に読むと「ぜにもほし」
これに対する返歌
「よるもうし ねたく我がせこ はては来ず なおざりにだに しばし問いませ」
最初の文字を拾うと「よねはなし」 最後の文字を逆に読むと「ぜにすこし」
このような言葉遊び的なものは中国や西洋にもあったらしい。
純粋に暗号として使用された例もあるようだが、歌にこのような言葉遊びがあるのは情緒があって面白い。
|