海外の暗号小説
[ヒ行 作品]
作品名 ビューティフル・マインド    天才数学者の絶望と奇跡
著者名 シルヴィア・ナサー   (Sylvia Nasar)   (訳:塩川 優)
発行日:2002.3.15
出版社:新潮社
形式:四六判
目次
第T部 ビューティフル・マインド
第U部 離れゆく生
第V部 ゆるゆると燃え出す火
第W部 失われた歳月
第X部 もっとも価値のある存在
ストーリーの概要
映画:「ビューティフル・マインド」の原作
ピュリッツァ賞(伝記部門)最終候補、全米批評家協会(伝記部門)大賞受賞

ジョン・フォーブス・ナッシュ(1928〜)、――経済学、生物学、政治学など、広い分野に多大な影響を及ぼした天才数学者。ゲーム理論、幾何学、解析学幾多の定理、概念に名を残した異才・・・・。
だが、その男の半生は、嵐とみまごうほどの転変の連続だった。
若き日の絶頂を境に、30年以上にわたって精神の病に苦しみ、「プリンストンの幽霊」と囁かれるほど見る影もなくした男が、ある日奇跡的に回復を遂げ、ついにノーベル賞を受賞する。
過酷な運命と闘った実在の天才数学者の、数奇な運命をたどる感動のノンフィクション。

・ニューヨーク・タイムズブックレビュー
 感動的な物語だ、謎めいた数学の世界と精神病の悲劇について、瞠目すべき洞察を提示している。
・ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン
 30年以上罹患しながら、ノーベル経済学賞を受賞したジョン・ナッシュの病との闘いは、何百人もの患者たちに希望を与えることだろう。
・ウォールストリート・ジャーナル
 本書は読み終えるのに3枚のハンカチを必要とする、数少ない科学的伝記である。
暗号について
映画では、ナッシュ自身が諜報組織の依頼によりソ連の暗号解読に携わるシーンが度々出て来て、それが元で精神病にかかるようなストーリー中心だが、残念ながら本書ではそういう場面はない。もっと、数学的な才能に関する話。
しかし、関連する数学者たちの暗号解読の話が出てくる。

・ 十数年後、いたるところで秘密の合図を受信し、自分だけが世界の安全を守れると妄信していた戦士ナッシュ・・・・
・ ある同級生は、ナッシュは不可解な小動物と人間を描いたエジプトの象形文字や、聖書の言葉に隠された秘密の意味を解読するのに憑かれたように没頭していたと述べている。
・ 歴史家の中には、第二次世界大戦を科学者の戦いと呼ぶものがいる。だが、科学は高度な数学を必要とするため、むしろ数学者の戦いというほうが適切だろう。戦争のさなか、プリンストンの数学共同体を構成するエリートたちの知能は、フル稼働していた。暗号の作成や解読の作業に関わり、暗号解読能力を発展させた。アメリカはミッドウェーの対日戦に勝利したが、それは日米開戦史のターニングポイントとなった。イギリスでは、1930年代にプリンストンで数年間を過ごし、博士号を取得したアラン・チューリングと、ブレッチリー・パークにいた彼の同僚たちが、ドイツの目をかいくぐってナチスの暗号を解読し、そのおかげで連合軍は潜水艦による大西洋での海鮮で主導権を握ることができた。
・ ロイド・シャプレーは第二次大戦の英雄だった。1943年に徴用された時、将校にするという申し出を断り、その年、中国の成都で陸軍航空部の三等軍曹として服務中に、日本の気象予報の暗号を解読して青銅勲章を授かった。
・ ナチスの潜水艦の暗号を解いた天才数学者アラン・チューリングは、逮捕されて裁判にかけられ、英国の同性愛禁止法によって52年に有罪とされ、54年の夏、研究室で青酸入りのリンゴを食べて自ら命を絶った。
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