暗号戦史
 「ヒ行 作品」
作品名 秘録 陸軍中野学校
著者名 畠山 清行      (編集:保阪 正康)
発行日:H15.8.1
出版社:新潮社
形式:新潮文庫
(ハ-35-1)

目次
第1編 諜報戦の内幕
第2編 陸軍中野学校の「秘密教育」
第3編 開戦前夜の南方工作
第4編 日米開戦と対外工作
第5編 戦慄の国内工作
<小伝>作家・畠山清行
その後の陸軍中野学校
付録:陸軍中野学校関係年表、南方関係地図

ストーリーの概要

「謀略は『誠』なり」―欧米諸国に対して情報戦に出遅れた日本は、昭和十三年、秘密裏に工作員養成機関「陸軍中野学校」を誕生させた。軍部の因習から離れた合理的、開明的な教育は、敗戦までの僅かな間に驚嘆すべき成果を挙げるが…。諜報とは何か、謀略とは何か。出身者たちの活躍と失敗を徹底的に追いながら、戦争の裏面と工作員の実態に迫った傑作ノンフィクション作品。

本書は昭和46年から49年に番町書房より刊行された「陸軍中野学校」全6巻を底本として一部を抜粋し、再編集したもの。
中野学校の教育・訓練について詳しく述べており、現代の情報機関でも通用する工作員練成システムを作り上げていたことが伺える。 中野学校の教育精神の礎となった、日露戦争における明石元次郎大佐の活躍も収録している。

目次の細部
第1編 諜報戦の内幕
 戦争とスパイ、講和に負けた日本、英国領事館を狙う、破れなかった紫暗号
第2編 陸軍中野学校の「秘密教育」
 兵務局分室と海狼艦隊、後方勤務要員養成所、謀略は「誠」なり、背広服の忍者たち、二つの中野学校、異国の土と化す運命、陸軍省襲撃さる
第3編 開戦前夜の南方工作
 淡路町謀略事務所、マレーの虎『ハリマオ』、戦雲南に流れて、排日中心地のスパイ領事館、覆面の南方企業調査会
第4編 日米開戦と対外工作
 開戦秘匿の『寿』無電、真珠湾に吹いた神風 、大演習と碧眼の女スパイ、サイゴンの偽放送、北方工作ツンドラの鬼
第5編 戦慄の国内工作
 狙われた吉田茂、吉田邸に二人の女スパイ、ヨハンセン工作班、近衛上奏文の行方、原爆と殺人光線、謀略兵器生産工場、キャノン機関と中野学校

暗号について
第1編 諜報戦の内幕
 ・戦争とスパイ:米が九七式三型暗号機を解読していたこと。各国の暗号が盗まれるのは出先の大使館。
 ・講和に負けた日本:日露戦争時、日本の使用していた電信線は、ロシアの線を部分的に使用していたので、電信の内容はロシアに筒抜け。暗号解読以前の問題。
 ・英国領事館を狙う:暗号盗読の三つの方法。クーリエの死亡事件。
 ・破れなかった紫暗号:外務省用の暗号機は簡単な構造だから解読されたが、海軍の暗号機は強度が高く、理論的には破られていない。海軍も米軍の暗号電を傍受し、簡単な暗号は解読した。暗号解読の事実は秘密だ。

第2編 陸軍中野学校の「秘密教育」
 ・兵務局分室と海狼艦隊:電話の盗聴。国際電信の送受信の検閲。スパイの用いる簡単な暗号の例。信書諜報。中国戦線における暗号事例。

第4編 日米開戦と対外工作
 ・開戦秘匿の『寿』無電:開戦時の暗号。商用電報利用の暗号。
 ・真珠湾に吹いた神風:米による日本外務省暗号の解読。ハワイにおける吉川、キューンのスパイ活動。
 ・サイゴンの偽放送:交信略号の偽利用。

第5編 戦慄の国内工作
 ・狙われた吉田茂:ヤマ機関による民間防諜対象の略号「吉田茂―ヨハンセン」、「鳩山一郎―ハリス」、「幣原喜重郎―シーザー」、「岩淵辰雄―イワン」。甲工作―無線暗号解読。
 ・ヨハンセン工作班:吉田邸内のスパイと機関員との合図の暗号。

*その他、随所に暗号事例が記述されている。
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