暗号戦史
「コ行 作品」
作品名 極秘電報に見る戦争と平和    日本電信情報史
著者名 大塚 虎之助   (監修 増田 民男)
発行日:2002.5.20
出版社:熊本出版文化会館
形式:四十六判
目次
日本電信の黎明、佐賀の乱から太平洋戦争終結までの71年間の電報資料による戦争・通信史
(細部は下記概要)
ストーリーの概要
 明治7年の佐賀の乱から昭和20年の太平洋戦争終結までの71年間の事変、戦争における膨大な外交、軍事の極秘電報及び米軍側の暗号解読資料等を元にした日本の近代戦争を語る第1級の戦史である。
 戦争に係わる膨大な電報資料は国立図書館、国立公文書館、外務省資料館等に保管されている。それらを収集分析した資料集。
 ことに「極秘」とされた外交電報、軍事電報は戦争や外交交渉の実態を、さらに緊迫した状況での暗号解読、情報戦、オトリ電報作戦や敵スパイを利用した逆無電など歴史の裏面も明らかにした日本の通信、電信の貴重な資料集でもある。

電報を見ると、独断で軍を進める軍部、米の暗号解読の実態、各種情報を都合の良い解釈で通し、耳障りな情報は無視する軍部の実態等言い逃れできない事実が明らかである。

 以下の目次細部により、内容を推察して頂きたい。
1 日本電信の黎明期
 ・テリガラフ/本格的電信技士第1号は榎本武揚/幻の幕府電信局/パリ万博からの「カネオクレ」電報/東京―横浜間に電信開通
2 佐賀の乱
 ・電信は歴史を証言する/佐賀の乱を伝える電報/熊本電信局の建設
3 台湾出兵
 ・初めての海外派兵/「出兵中止」電報を無視/日本軍を悩ますマラリア/賠償金で決着
4 神風連の変
 ・「ダンナハイケナイ」/熊本電信局襲撃/神風連事件の往復電報
5 西南戦争
 ・鹿児島賊徒征討の令あり/「本日11時10分鎮台自焼セリ」/唯今戦争始メ候/薩軍による軍旗奪取事件/田原坂の激闘/城からの突破隊/熊本城一番乗り/征討軍団の熊本城入城/薩軍の彷徨/城山の最後
6 日清戦争
 ・朝鮮を巡る日本と清国との確執/豊島沖海戦/講和談判と三国干渉/朝鮮王妃殺害事件
7 日露戦争
 ・談判断絶スル通牒ヲ為ス光栄を有ス/仁川沖と旅順口の海戦/陸軍の進撃/203高地の激戦/水師営の会見/バルチック艦隊の東航/日本海海戦「皇国ノ興廃此一戦ニアリ/ポーツマス条約
8 第1次世界大戦―日露戦争とシベリア出兵
9 石光真清の諜報記
10 済南事件と第6師団
11 張作霖爆殺事件
12 「満州事変」―宣統廃帝の擁立
 ・柳条湖で満鉄線路爆破/独断で朝鮮軍を投入/関東軍の下克上/ラストエンペラーの宣統廃帝の擁立/「満州国」建国とリットン調査団
13 日中戦争
 ・第1次上海事変/爆弾三勇士/弁当箱爆弾事件/盧溝橋事件/郎坊事件・広安門事件・通州事件/第2時上海事変/南京への爆撃/杭州湾から南京へ/南京攻略/英艦レディバード号砲撃事件/パネー号撃沈事件/占領後の南京/アメリカ大使館の自動車事件
14 昭和の暗雲―電信労働者への弾圧・熊本の場合
15 2・26事件
 ・電務局に情報部を設置/反乱軍の電話傍聴/原隊へ復帰せよ
16 張鼓峰事件
 ・天皇、「大陸命」案を拒否/師団長の独断で戦闘開始/ソ連軍の反撃/停戦交渉の成立
17 ノモンハン事件
 ・第1次ノモンハン事件/第2次ノモンハン事件/ガソリン瓶で肉薄戦闘/ソ連軍の総攻撃
18 ゾルゲスパイ事件
 ・傍聴戦争/日独伊防共協定/対ソ戦の日本の真意/バルバロッサ作戦(ソビエト侵攻作戦)/日本政府の立場は如何/ゾルゲスパイ団の逮捕/ゾルゲが打電したスパイ電報/情報の入手先
19 情報戦争―日本の暗号を解読せよ
 ・解読されていた日本の暗号/暗号機の開発と導入/アメリカは真珠湾攻撃を知っていた?/陸軍の暗号は安泰だった
20 アジア・太平洋戦争
@ フランス領インドシナ(仏印)進駐
 ・南支派遣軍の策動
A 日米交渉とアメリカ大統領からの天皇への親電
 ・日米戦うべからず/日米会談/東条内閣成立/悪名高き「ハルノート」/交渉決裂と暗号機の処分/対米覚書の通告遅延/野村大使が打電した緊急電信対策/ルーズベルト大統領の天皇宛親書
B 真珠湾の日本人スパイ
 ・外務省書記生森村正/日本人スパイの電報
C 真珠湾攻撃とマレー沖海戦
 ・・−・・ ・・・ ・・−・・ ・・・ ・・−・・ ・・・(トラ トラ トラ)/マレー進攻作戦とイギリス極東艦隊の撃滅
D ウェーキ攻撃と日米情報戦争
 ・アメリカ海軍無線情報センター/日米海軍の通信解析/第48師団通信兵が利用した敵スパイの逆無電
E 東京空襲と珊瑚海海戦
 ・ドーリットル東京空襲/珊瑚海海戦
F ミッドウェー海戦
 ・[AF]は何処/アメリカ軍のオトリ電報作戦/ミッドウェー攻撃/悪夢の爆装転換
G マドリードの国際スパイ団
 ・TO諜報機関と須磨スペイン大使/TO機関情報を無視/TO諜報機関との密約の終了
H ガダルカナルの死闘
 ・フェルディナンド情報/ガダルカナル島陥落/第1次ソロモン海戦/ガダルカナル島奪回作戦/飢餓の中の総攻撃
I 山本長官の撃墜
 ・海軍甲情報/復讐作戦
J 伊8潜ノ訪独成功セリ
K 航空兵力ヲ増強セヨ
L 海軍乙事件
M 台湾沖航空戦
 ・幻の大戦果/撃沈せる敵艦は数隻を出ず/生かされなかった戦果判定見直し
N レイテ沖海戦
 ・捷1号作戦/驚愕の作戦計画/神風特別攻撃隊/戦艦「武蔵」の最後/栗田艦隊の敵前反転
O 玉砕した慟哭の島々
 ・アッツ島の玉砕/サイパン島の悲劇/サイパン残存兵の終戦/硫黄島の激闘
P 地獄を見たフィリピン派遣電政隊
 ・フィリピン電政局/電政局主力、バギオへ/バギオ脱出と人肉飯盒/マニラ残留電政隊/振武集団特攻隊と人肉ハンター/日野退院、処刑を逃れる
Q 沖縄の激戦
 ・沖縄逓信特攻隊/戦艦「大和」の海上特攻出撃と神風特攻隊/敵ニ最後ノ出血ヲ強要スルニ決ス/義烈空挺隊/県民ニ対シ後世特別ノ御高配ヲ賜ランコトヲ/牛島司令官の決別電報/沖縄最後の無電
21 大日本帝国の崩壊
 ・非常無線通信と警報通信/B-29戦略爆撃機による空襲/終戦外交/ポツダム会談と原爆実験の成功/謀略放送/B-29のコールサイン/不気味な正体不明機のコールサイン/ポツダム宣言受諾に関する佐藤大使の意見/原爆投下/ソ連の対日宣戦布告/終戦工作/最後の特別攻撃隊 宇垣長官の私兵特攻/終戦と反乱/昭和神風連事件/逓信院総裁松前重義の通信復興対策
暗号について
 日本が係わった戦争・事変における暗号戦史について、殆どの事例が網羅されている。
 また、極秘電報は、明治初期のものを除き、暗号に組まれて送信されるので、この本に掲載されている電報は全て暗号に係わると言っても良いのかもしれないが。
主要な事例
・ 18 ゾルゲスパイ事件
・ 19 情報戦争:日本の暗号を解読せよ
・ 20A 日米交渉とアメリカ大統領からの天皇への親電
・ 20B 真珠湾の日本人スパイ
・ 20C 真珠湾攻撃とマレー沖海戦
・ 20D ウェーキ攻撃と日米情報戦争
・ 20E 東京空襲と珊瑚海海戦
・ 20F ミッドウェー海戦
・ 20H ガダルカナルの死闘
・ 20I 山本長官の撃墜
・ 20L 海軍乙事件
・ 20P 地獄を見たフィリピン派遣電政隊
・ 21 大日本帝国の崩壊
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