暗号戦史
「ニ行 作品」
作品名 日本海海戦とメディア     秋山真之神話批判
著者名 木村 勲
発行日:2006.5.10
出版社:講談社
形式:講談社・選書・メチエ362
目次
序章 日本海海戦イメージの変遷
第1章 「敵前大回頭」とは何か
第2章 軍神の誕生
第3章 ウラジオ艦隊、潰滅せず
第4章 秋山作戦の迷走
第5章 「開戦後三十分で勝利」したか
第6章 メデイアはどう報じたか
終章  
ストーリーの概要
連合艦隊司令長官・東郷平八郎とその参謀・秋山真之。
この軍神と天才によって敢行された丁字戦法によって、連合艦隊はロシアのバルチック艦隊を撃破―。
日本海海戦の勝利は胸のすく快挙として昭和の軍国主義イデオロギーの核心を形成していく。
その伝説の影響は今日にも及ぶといって過言ではない。
これまで明らかにされることのなかった史実を、第一級史料『極秘明治三十七八年海戦史』を丹念に読み解き、浮き彫りにするとともに、神話を作りあげていったメディアの側をも批判的に検証する。
著者は、日露戦争前・中・後のメディア、東郷の面子を保つ取り巻きの軍人の談話、そして司馬遼太郎の「坂之上の雲」、島田謹二の作品により、軍神・東郷と天才・秋山は過度に伝説化されていったと述べている。

司馬が書いた当時には、公開されていなかった各種資料に基づき、日本海海戦を検証。
暗号について
序章:「天気晴朗なれども波高し」
第4章:藤井証言「奇襲隊取止めの真相」


秋山が起案し、大本営に向けて発したたと言う「敵艦見ゆとの警報に接し連合艦隊は直ちに出動、之を撃滅せんとす。本日天気晴朗なれども波高し」電文は暗号か?
・後段の部分は、秋山が当日の天気を見て即興で加えたとされている。(東京の中央気象台からほぼ同文の気象予報が秋山の机に届いていた)
・この部分が、作戦変更通知の暗号であるという説に反論。
 ・変更された作戦とは、連繋水雷(機雷)による先制奇襲攻撃である。
 ・海軍軍令部「極秘明治37・8年海戦史」に記述されいる作戦であり、静かな海面でないと実行できないため、「波高し」の文により、この作戦の撤回のあることを通知したと言う説。

 しかし
 ・作戦は、東郷に一任されており、大本営に了解を求める筋のものではない。
 ・この作戦は、海戦の6日前に撤回されており、当日、大本営に通知する必要はない。
と分析・検証している。

暗号説
・戸高一成:「日本海海戦に丁字戦法はなかった」:中央公論・平成3年6月号
・田中宏巳:「日本海海戦の丁字戦法は幻の戦法だった」:歴史群像シリーズ24・日露戦争
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