暗号戦史
「ヌ行 作品」
作品名 盗まれた情報     ヒトラーの戦略情報と大島駐独大使
著者名 カール・ボイド  (CARL BOYD)  (訳:左近允 尚敏)
発行日:1999.12.20
出版社:原書房
形式:四六判
目次
序章 
第1章 大島と真珠湾に至るマジック
第2章 真珠湾後の大島の電報
第3章 1942年の戦略変換とマジック情報
第4章 マジックと東部戦線の謎
第5章 1943年のぢ棟梁旅行中のマジック情報
第6章 オーバーロード作戦のマジックとアルデンヌ奇襲
第7章 マジックと独ソ分離和平の問題
第8章 マジックと第3帝国の終焉
付録 フランスにおけるドイツ防備状況視察についての在ベルリン日本大使のマジック電報
ストーリーの概要
ベルリンから東京にあてた大島の暗号電報は、英米によって傍受解読されていた。大島は欧州戦線のヒトラーの戦略を見透す情報を提供し続けたのだ。信じ難い情報戦の実際を全公開!

ヒトラーとその上級補佐官達の考えについての、ワシントンの最も重要な情報源の一つは。日本の駐独大使である大島浩だった。彼は34年から駐独陸軍武官、38年からは大使だった。39年秋に本国に召還されたが、次の年の12月には再任され、以後戦争が終わるまでベルリンに留まった。
米陸軍省の暗号部は、多しあの二度目の大使勤務が始まる2、3ヶ月前までには、日本の外交暗号の解読に成功していた。以後、大島が頻繁に送った電報は解読され、翻訳文はルーズベルト大統領、マーシャル陸軍参謀総長、上級情報幕僚らに届けられた。
大島は頭脳明晰で経験豊かなオブザーバーだったが、客観性を欠いたため、自国にとっては期待されたほどは役に立たなかった。彼の見解は決定的に膨張主義的であり、スターリングラードの戦いがドイツにとって大きな厄災になることが明白になるまで、繰り返し日本政府に対し対ソ構成を要請している。
戦争をあまりにもドイツと日本の利益と言う観点からしか見なかったために、ドイツの力を過大評価し、少なくとも英米の海空軍が連合軍として、ドイツと日本には決して出来なかった作戦の調整能力があることを示すまでは、グローバルな視点を持ち得なかった。

戦争の後半期に大島がヒトラーとリッペントロップ外相に対して行った、ドイツはソ連と和平を交渉すべきだと言う勧告は、彼の新たな現実主義を反映したものだった。大島も、ドイツがヒトラーの人種的思想的幻想と、ロシアや東欧における大量虐殺政策のために、苦境から抜け出す道を捜す事が不可能だということを、遅まきなきながら知ったのであろう。
ドイツと日本はお互いに、自国の立場よりも相手の立場の方をより現実的に理解していたのではないかと思われることがしばしばある。
カール・ボイドが大島の電報を再復活させたことは、第2次世界大戦の研究に興味深い、かつ並々ならぬ貢献をなすものであり、またハイレベルな情報のあいまいさに対する挑戦的なケーススタディになっている。
(序文:ピーター・パレット:より)
暗号について
(序章より):全編、暗号電報の解読に起因する話であるので、序章の抜粋に留める)

・マーシャル米陸軍参謀総長:wwUにおける最も重要な情報源の一つはベルリンの日本大使。「ヒトラーの欧州における意図についての情報の重要な基礎」 → ・米陸軍暗号部(SIS)が、「大島が日本政府に報告した」暗号を解読したから。

・日本の外交暗号システムは、フリードマンとロウレットにより、解読された。
・イギリスによるドイツのエニグマ暗号を解読した「ウルトラ」では得られなかった連合国の情報のギャップを埋めた。
・陸軍の暗号分析員兼日本語翻訳員:ヘンリー・グラフ;大島の電報は最も魅力があった。駆け出しの歴史家として大島の電報を読みながら、世界の中心に立っているような気がした。
・米陸海軍とも通信情報の主目的は、戦時において主要な外国の軍の通信を効果的に読むことだった。従って、この小さな米暗号チーム(SIS)は、日本に第1の、ドイツに第2の優先度を与えた。
・米海軍は、日本の帝国海軍暗号を解読した。
・外交暗号の解読は、陸海軍で協力し、奇数日発信の電報は海軍が、偶数日は陸軍が担当した。
・米軍の暗号解読に対する取り組みの骨子が描かれている。
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