暗号戦史
「セ行 作品」
作品名 戦艦大和
著者名 吉田 満
発行日:昭和43.7.20
出版社:角川書店
形式:角川文庫2529
目次
・戦艦大和の最後
・占領下の「大和」
・一兵士の責任
・異国にて
・散華の世代
・死によって失われたもの
解説:阿川弘之
跋文(初版本より)
・吉田君との因縁:吉川英治、・正直な戦争経験談:小林秀雄、・真実の記録:林房雄、・美しい人間性の現われ:河上徹太郎、一読者として:三島由紀夫
ストーリーの概要
メインは、「戦艦大和の最後」、他は筆者の随筆。
沖縄戦に出航した大和の戦い、大和艦上での指揮官・兵士の戦いの実相を、参加した一予備学生が克明に記録。

以下、阿川弘之氏の解説から抜粋。
筆者は、学徒動員で兵科予備学生として海軍に入り、少尉任官後副電側士として大和の乗組員になり、昭和20年4月、沖縄特攻出撃に参加し、生き残った。
「戦艦大和」は、どんな軍人が書き残した戦記よりも克明詳細で貴重な戦記であり、戦後現われたどんな戦記文学よりも優れた戦記文学であることを信じて疑わない。
3千人近い乗員が世界一の巨艦にたてこもって、戦って戦い抜いて斃れ沈んでいった海空戦のありのままの凄絶な記録である。
この作品は、個人の力ではどうにもならなかった著者の生死の、微妙な偶然の間をくぐり抜けて私たちの手に残った日本民族のひとつの記録碑と呼んでいいものである。

しかし、「戦艦大和の最後」発表の意図は、占領下のわが国では米軍検閲当局の忌諱にふれた。私の見た校正刷りは、結局「創元」の創刊号には載らなかった。この作品が完全なかたちで陽の目を見るには、昭和27年の講和条約成立まで待たねばならなかった。
彼らが初めいかにしてこの優れた戦記文学を抹殺してしまおうと努力したか、次に「リーダーズ・ダイジェスト」が以下にこの作品をゆがめ、アメリカ人の溜飲を下げて喜びそうなかたちにして翻訳を掲載したか、その仲介者の米国人が金の上でどんなえげつないことをしたかは、「占領下の「大和」」に詳しい。

一方、この作品が世に出てからは、著者の姿勢が根本的に戦争肯定であり、軍国主義鼓舞に繋がるとする文芸評論家や学者からの風当たりが非常に強かったということが「一兵士の責任」の中に記されている。これはわが国知識人のdisgraceというべきであろう。

暗号について
大和の通信室における暗号員の行動が部分的ではあるが、記録されている。
inserted by FC2 system