暗号戦史
「シ行 作品」
作品名 史上最大の人事    陸軍550万組織はこうして動いた
著者名 額田 坦 著   上法 快男 編
発行日:昭和58年10月10日
出版社:芙蓉書房
形式:四六版(ソフト)
目次
史上最大の人事・解説
*編者まえがき *旧陸軍人事の基本理念 
*人事担当機関 *人事資料と命課公表の手段 
*軍隊幹部の補充制度と戦時職務など 
*現代の官庁ならびに企業人事への教訓 
*派閥の問題点 *抜擢の問題 
*人事についての綜合所見 *用語の解説
550万組織のドラマ
*人事とのかかわり合い 
*日支事変の進展に伴う人事刷新 
*人事担当課長としての人事 
*統帥、軍政の中枢人事 
*陸軍大将とは
ストーリーの概要
額田坦著「陸軍省人事局長の回想」を原本とし、現代の大組織の官庁、企業などの人事の参考となる部分を多く取り入れて抄録したもの。
陸軍人事は統帥の根源と言われ、あまりにも秘密が厳守されていたので、人事行政の運用は、ごく一部のもの以外には理解されていなかった。

終戦時の陸軍547万2400名(当時の復員省調査)、驚くべき数である。
将校:30万、下士官:100万、兵員:420万
このような巨大な人員を組織し、衣食住を確保すると共に、戦闘資材を与えながら、究極的に敵に対して行動を起こさせた原動力は何か。その基本には、戦う人間の集団を組織化し、戦う意欲をわき立たせる人間の教育訓練がある。その前提は、組織の基幹となるべき人、即ち幹部の人選。
そして、人事とは、・進退、任免 ・補職、命課 ・給与 ・賞罰等の実施

これを基本に目次にあるような項目について解説している。(編者は、額田氏の下で人事を担当していた)
暗号について
 人事と暗号とは、直接の関係はないが、額田氏が昭和18年10月に参謀本部第3部長に転任し、兵站総監部の「運輸通信長官」を兼務した。その中で暗号に触れている。

「参謀本部第3部長に転任」から
 通信課長は、和製チャーチルの俗称を持ったエネルギッシュな熱心家・仲野好雄大佐であり、日夜精励努力、難渋な暗号にも一新紀元を画して(無限乱数を採用)万全を期した。
 暗号については、日本暗号学会を組織し、故高木貞二博士を副会長(会長は筆者)とし、著名な数学者を網羅して研究を始めた。これがため戦後、来日した米国爆撃調査団も日本陸軍の暗号だけは、全く解読できなかったと報告していた。

「「上意には副えない」と今村大将」から
 杉山参謀総長から、「今村にどこかで一作戦させよ」と指示が出たが、今村大将は「当方は脚(機動力、つまり船舶)ない」ことを理由に遺憾ながら「上意に副えない」と述べた。
 なお、今村大将が心配していた「わが暗号が敵に解読されていないか」の件については、暗号係の金子中佐が、種々検討の上、詳しく説明し、絶対に心配のない旨報告したので安著されていた。
 今村大将は、山本連合艦隊司令長官機がボーゲンビルの上空で、待ち構えた敵機に撃墜されたのは暗号を解読されたためではないか、と懸念されていたが、これは戦後明らかになった。

「不評だった最高級者への行賞」から
 5年ぶりに陸軍省に帰って見ると、大本営の影が薄く、諸事平時色の濃い観があった。ただし人事局の人員も増え、(暗号班も特設され)勤労動員の学生たちも目についた。
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