暗号戦史
 「シ行 作品」
作品名 真珠湾の裏切り     (BETRAYAL PEARL HARBOR)
 [チャーチルはいかにしてルーズヴェルトを第2次世界大戦に誘い込んだか]
著者名 ジェイムズ・ラスブリッジャー、 エリック・ネイヴ  (JAMES RUSBRIDGER、 ERIC NAVE)
(訳:大蔵 雄之助)
発行日:1991.11.25
出版社:文藝春秋
形式:四十六判
目次
第1章 ブロードウェイの盗聴者
第2章 よその紳士の手紙
第3章 不吉な前兆
第4章 魔法を解く
第5章 オートメドン文書
第6章 不穏な関係
第7章 汚辱の朝
第8章 チャーチルの戦争
第9章 ブラインドを下ろす
ストーリーの概要
 一般的に、開戦前後、真珠湾攻撃あるいは日本の暗号解読に関する著書は、アメリカによる日本の外交暗号の暗号解読を主体に書かれているが、本書は、イギリスの暗号解読作戦を主体に書かれている点で特異であり、重要性はあると思う。
 著者の一人であるネイブは、オーストラリア出身の将校であるが、暗号能力を買われ、第2次世界大戦前後においてGCCS(イギリス官立暗号学校)に勤務した。1930年代から40年代にかけては、香港のストーンカッター島を含む様々な極東の出張所に籍を置いた。その後、本国のMI5に相当する機関、オーストラリア保安情報組織の長を任された。
 その共著者であるジェームス・ラスブリッジャーによって歴史的裏づけ、調査が行われた。

 多くの著書においては、ルーズベルト大統領が暗号解読により、日本の真珠湾攻撃を知っていたが、日本に攻撃させ、アメリカが参戦できる世論作りの真珠湾陰謀説の真偽を論じている。この説は、奇襲の行われた1941年12月7日(訳者註:日本では8日)から1週間程で現われている。

 この「真珠湾の裏切り」においては、「チャーチルは本当のところ、真珠湾攻撃があるという明確な情報を得ていたという。ただ、真珠湾攻撃が起こればアメリカの参戦することは分かりきったことだったので、彼はわざとルーズベルトに情報を伝えなかったのだそうだ。この陰謀説は、ここでは「裏切り」説と呼ばれている」

 wwUにおいて、アメリカとイギリスは実にうまく共同作戦を実施してい反面、暗号解読作戦においては、表向きは共同しつつも裏では、夫々暗号解読の実態を隠しつつ本音は表に出さなかったようだ。特にイギリス、チャーチルの狡賢さが目立つ。

しかし、イギリスは殆どこの種情報について公開していないので真実は・・・・・
暗号について
 「裏切り」説の論点のうち暗号に関しては、次のような議論である。

 1941年以前の段階で、英米ともに日本の外交暗号「パープル」のみならず、海軍の作戦暗号「JN−25」までも解読していたというものだ。 より重要なことは、イギリスが「JN−25」の解読に先駆けていたにもかかわらず、その成果を「事実上の」連合国と共有することを避けていた点である。
 一般的には、外交暗号である「パープル」の暗号解読に焦点が当てられ、作戦の具体的な命令に関する海軍の暗号「JN−25」には関心を払ってこなかった。

 実は日本海軍の暗号「JN−25」の暗号解読は比較的簡単に出来たと言う。
 ・暗号書は、日本の外交関連使節に侵入し、写真を撮ることで得られた。
 ・日本の無線技師はきわめて安全でない手段を用いて交信していた。その手段とは、高レベルの暗号も低レベルの暗号も同様な手段でそうしんする。あるいは 同じメッセージを何度も送った。
 ・しかもそれを、日本語特有の美句麗句、同一用語をクドクドと使用した。それ故簡単に読むことのできた。
 ・暗号士は、面倒なので規定に従わず、同一乱数を繰り返し使用した。また、再送要求に対し、平文を送ったことも茶飯事だったらしい。

その他、全編が暗号、暗号解読に関するものであり、必読書であろう。
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