暗号戦史
「シ行 作品」
作品名 深海の使者
著者名 吉村 昭
初出:文芸春秋;S47.1〜48.3

発行日:1976.4.25
出版社:文芸春秋
形式:文庫
目次
「なし」
ストーリーの概要
 太平洋戦争が勃発して間もない昭和17年4月22日未明、一隻の大型潜水艦が密かにマレー半島のペナン島を出航した。
 3万キロも彼方のドイツをめざして・・・・。
 大戦中、途絶した日独両国の封鎖下にあった大西洋に、数字にわたって潜入した日本潜水艦の苦闘を描いている。

(あとがきから)
 昭和17年秋、新聞に大本営発表として一隻の日本潜水艦が訪独したという記事が掲載された。戦局も苛烈になった頃で、遥か隔たったドイツにどのようにして赴くことができたのか、中学生であった私には夢物語のようにも感じられた。
 その潜水艦の行動を追ってみたが、同艦は華々しい発表を裏切るように帰国寸前に爆沈していた。そして、その調査を進めるうちに同じような目的を持った多くの潜水艦が日本とドイツの間を、あたかも深海魚のように海中を行き来していた。それは戦史の表面に現われることもない、暗黒の海にひそませた行動で、しかも大半が改訂に没した悲劇であることも知った。
 沈黙の世界の出来事であるためか、正式な記録はない。わずかに遣独第2便の伊号第八潜水艦の行動日誌を艦長であった内野信二氏が保存しているのみで、他は関係者の記した断片的なものしか残されていない。
*文芸春秋読者賞受賞
暗号について
* 派遣された潜水艦と軍令部、駐独日本大使館との間の連絡のため、特種暗号を準備
* 外務省と大使館の暗号電報の送受が上手くいかないため、国際電話で情報交換をした。その際、盗聴されても理解できない言葉で会話することを決定。鹿児島弁を活用した。
  その時点では成功したが、後になって、録音されたテープをアメリカに送り、伊丹という米国籍をもつ日本人青年がたまたま鹿児島出身でそれを解読した。2ヵ月後であったので情報としては役立たなかった。
* その他、日独の潜水艦相互の連絡のため、英側の情報活動に対抗し、創意工夫して信号、合図等を取り決め使用した。
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