暗号戦史
「ス行 作品」
作品名 スパイだったスパイ小説家たち (LITERARY AGENTS―The Novelist as Spy)
著者名 アンソニー・マスターズ   (Anthony Masters)     (訳:永井 淳)
発行日:1990.3.25
出版社:新潮社
形式:四六判(ソフト)
   「新潮選書」
目次
序文 レン・デイトン
プロローグ
第1章 アースキン・チルダーズ―大胆不敵なスパイ
第2章 ジョン・バカン―ロマンティックなスパイ
第3章 サマセット・モーム―退屈したスパイ
第4章 グレアム・グリーン―使いにくいスパイ
第5章 イアン・フレミング―颯爽たるスパイ
第6章 ハワード・ハント―知りすぎたスパイ
第7章 ジョン・ル・カレ―生まれながらのスパイ
エピローグ レン・デイトン―控えめなスパイ
ストーリーの概要
(序文から抜粋)
マスターズ氏は手品師の巧みな手捌きで、今世紀の最も熟達した娯楽性豊かな作家達の目を通してイギリス情報機関の内情をのぞき見るチャンスを、この労作によってわれわれに与えてくれた。
イギリスの情報機関のかってのメンバー達がここで我々に真実を語っているとしたら、イギリスの情報機関はこの先何年間も戯曲や映画や本にふんだんに素材を提供し続けることになる。
組織の特筆すべき魅力のひとつは、組織を構成する人間のほぼ全員が、我が国の最も有名なパブリック・スクールや大学の出身者だと言うことである。これが彼らの冒険に陽気とは言わぬまでも懇親会的な色合いを与えている。
(プロローグから抜粋)
彼らは皆鋭い探究心のみならず豊かな想像力の持ち主であったからこそ、情報部からのアプローチを受けた。バカンはWWT中に情報局長になったし、モームはスパイ任務を帯びてスイスとロシアへ派遣され、マッケンジーはアテネに派遣された。WWU中は、マガリッジとグリーンがMI6に入ってアフリカに派遣、ホイートリーがMI5の周辺に出入りし、ドライバーグはイギリス共産党に潜入して二重スパイになったと言われているし、ビンガムはあの謎に包まれたMI5の反転覆工作部門の工作担当者になった。
作家であったがために採用されたのでなく、情報機関勤務からインスピレーションを得て成功した者もいる。フレミングは、ボンドシリーズを書いて圧倒的な成功を収めた。ウォーターゲイト・スキャンダルとのかかわりで悪名高いハワード・ハントは、米の情報機関を賛美する数十冊のスパイ小説を書き、ジョン・ビンガムの下でMI5に採用されたコーンウェル(ジョン・ル・カレ)は、イギリス情報機関に関する一般通念に挑戦状を突きつけた。
(訳者あとがきから抜粋)
原書には13人の作家が取り上げられているが、5人は作品の邦訳がないかあってもごく一致部に過ぎないので割愛した。ハワード・ハントの邦訳も少ないが、ウォーターゲート事件で記憶にあり、ただ一人のアメリカ人作家であり、CIAの性格をある程度うかがい知ることが出来る意味で加えた。
・ コンプトン・マッケンジー―軽率なスパイ
・ マルカム・マガリッジ―怒れるスパイ
・ トム・ドライバーグ―頽廃的なスパイ
・ ジョン・ビンガム―愛国的なスパイ
・ デニス・ホイートリー―スパイになりたがったスパイ
暗号について
第2章 ジョン・バカン―ロマンティックなスパイ
 ・「39階段」:ハネー;暗号解読に長じている

第3章 サマセット・モーム―退屈したスパイ
 ・「アシェンデン」;暗号名・・・モーム→サマーヴィル、レーニン→ディヴィッド、トロッキー→コール、イギリス政府→エア社、労兵評議会→ケント社、ロシア社会民主労働党極左派→バートン社、ロシア政府→ウェアリング社
 ・フィンランド情勢不穏時、モームが専用暗号で送った処置事項の一つ・・・「暗号解読書と書類を、安全のために大使館に保管すべき」
 ・「暗号を組み立てたり解読したりするほど退屈な仕事はありません。」

第5章 イアン・フレミング―颯爽たるスパイ
 ・40号室における暗号解読・・・ツィンマーマン電報解読の成果
 ・ドイツの高速機動艇を拿捕して使われている暗号の研究をすることを提案
 ・部下に暗号解読等の高等テクニックを学ばせた
 ・アルジェ上陸時、イタリア海軍司令部を急襲し、暗号書等を奪取した

第6章 ハワード・ハント―知りすぎたスパイ
 ・OSS採用時、暗号の訓練を受けた。
 ・ウルトラ・シリーズを研究した結果、フレミングが諜報活動よりエニグマとウルトラ通信により多くかかわっていたと信じた。
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